離婚調停の呼び出し状が届いたときの対応と、調停に向けて準備すべきこと

2024年02月26日
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離婚調停の呼び出し状が届いたときの対応と、調停に向けて準備すべきこと

夫婦間の話し合いで成立する離婚を「協議離婚」といいますが、「離婚調停」によって成立する離婚のことを「調停離婚」といいます。

配偶者との間に離婚の話が出ていたと思ったら、ある日突然、裁判所から「離婚調停の呼び出し状」が届くという場合もあります。

本コラムでは、そもそも「離婚調停」とは何か、呼び出し状が届いた場合の対応や離婚調停に向けた準備などを、ベリーベスト法律事務所 湘南藤沢オフィスの弁護士が解説していきます。

1、そもそも離婚調停とは?

離婚を成立させる方法には、「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」があります。

基本的には、まずは夫婦間の話し合いをする「離婚協議」によって、離婚の成立をはかることになります。
そして、話し合いでも合意が成立しなかった場合には、「離婚調停」が行われることになるのです
以下では、「離婚調停」の概要や、調停のおおまかな流れを解説します。

  1. (1)離婚調停について

    離婚調停は、正式名称を「夫婦関係調整調停」といいます。
    裁判官1名と調停委員2名の合計3名から構成される「調停委員会」という第三者を交えて話し合いを行います。
    また、「離婚をするかどうか」という事柄のほかにも、以下のような内容についても話し合いが行われるのです。

    • 子どもの親権者をどちらにするか
    • 面会交流をどうするか
    • 養育費や財産分与をどうするか
    • 慰謝料はどうするか


    調停での話し合い中には、調停委員からアドバイスを受けることや、相手と直接顔を合わせないような配慮を受けることも可能です。基本的には離婚を求める側(申立人)と、求められる側(相手方)とは別々の待合室で待機し、それぞれ別に呼び出されて調停委員と話をすることになります。

    離婚調停はあくまでも「話し合い」で離婚について決めていきます。調停そのものには強制力はなく、お互いに合意しなければ離婚は成立しません
    そのため、合意に至る場合もあれば、決裂してしまう場合もあります。
    離婚調停が成立した場合は裁判所に「調停調書」を作成してもらい離婚ができますが、不成立だった場合にもまだ離婚をしたい場合には、改めて離婚訴訟を提起して裁判によって争う必要があるのです。

  2. (2)離婚調停の流れ

    ① 申し立て
    まずは「相手方の住所地の家庭裁判所」あるいは「当事者である夫婦の合意によって決めた家庭裁判所」に夫か妻が離婚調停の申し立てを行います。
    申し立てた人を申立人、申し立てられた人を相手方といいますが、申し立てを行うために相手方の同意を得ておく必要はありません

    ② 調停期日の調整・決定
    申し立てが受理されると、次に行われるのが「第1回調停期日の調整・決定」です。
    決定方法は家庭裁判所から指定される場合もあれば、申立人と家庭裁判所が調整を行った上で離婚調停期日が決定する場合もあります。
    第1回調停期日は申し立てが受理されてから1か月~2か月後になることが一般的です

    ③ 離婚調停の呼び出し状の送付
    第1回調停期日が決まると、申立人と相手方の双方に対して裁判所から調停期日を知らせる通知書、いわゆる「離婚調停の呼び出し状」が送付されます。

    ④ 第1回調停期日
    呼び出し状で指定された日時に申し立てが行われた家庭裁判所に行き、まずは申立人への聴き取りが調停委員によって行われます。
    次に相手方への聴き取りが行われ、相手方は調停委員から申立人の主張を伝えられ、今度は申立人に相手方の主張が伝えられ……ということを交互に繰り返していくことになるのです。

    双方の主張を踏まえて調停委員が解決案を提示されて、合意に至れば「離婚調停」は終了しますが、一度の調停で合意に至るケースはほとんどありません
    合意に至らなければ、第2回調停期日が決定されます。

    ⑤ 第2回以降の調停期日
    第2回以降の調停期日は、第1回調停期日のおおよそ1か月後に指定され、当日の流れは第1回調停とほとんど変わりません。
    ここでも合意に至らなければ第3回、第4回と調停が続きます。

    ⑥ 離婚調停の終了
    合意に至れば、裁判所から「調停調書」が作成されて離婚調停は終了です。
    また、何度調停をしても合意に至る様子がない場合や、どちらかの当事者の欠席が続いた場合には、「離婚調停不成立」として、離婚調停は裁判所によって終了されます

2、離婚調停の呼び出し状が届いたらどうすればいい?

以下では、離婚調停の呼び出し状が裁判所から届いた場合にとるべき対応や注意点を解説します。

  1. (1)呼び出し状が届いたらやるべきこと

    ① 書類・期日の確認
    まずは、呼び出し状に記載されている第1回調停期日を確認しましょう。
    期日に予定が重なり出席ができない場合には、裁判所に連絡すれば日時の変更をしてもらえる可能性があります。

    また「呼び出し状」と一緒に封筒で送られてくる以下の書類についても確認する必要があります。

    • 申立人が家庭裁判所に提出した離婚調停申立書の写し
    • 調停についての説明書
    • 裁判所までの地図
    • 調停の進行のための照会書
    • 答弁書のひな型


    このなかでも「進行のための照会書」と「答弁書」は、調停期日の1週間前までに、裁判所へ提出しなければなりません

    ② 照会書への記入・答弁書の作成
    書類と期日の確認が終われば、「照会書」への記入と「答弁書」の作成をしましょう。
    「照会書」には「調停に出席できるか」や「離婚の意思はあるか」などの簡単な質問が記載されているため、回答を記入していってください。

    「答弁書」は申立人が作成した離婚調停申立書の内容に対する相手方(前述のとおり、ここでいう「相手方」とは、離婚調停の申立人ではない方です)の主張を記載します。答弁書は、調停委員に自分の言い分を伝えるための大切な書類です
    ただし記載できる欄は限られているため、もっとも主張したいことをなるべく簡潔に記載する必要があります。

  2. (2)呼び出し状が届いたときの注意点

    呼び出し状を無視して離婚調停に欠席を続けた場合には、以下のような問題が起きるおそれがあります。

    ① 訴訟へ発展する可能性がある
    呼び出し状を無視して離婚調停への欠席が続くと、調停は不成立になります。
    その場合には、離婚をしたい側、つまり申立人が離婚裁判を提起できるようになります

    本来なら話し合いで解決できる可能性が高いような場合でも、呼び出し状を無視して欠席を続けることで、訴訟にまで発展してしまうおそれがあるのです。

    この離婚裁判まで欠席を続けると、裁判官から「被告(離婚調停のときの相手方)は原告(離婚調停のときの申立人)の主張に反論をする意思がない」、つまり「原告の主張を認めている」と判断されて、自分に不利な判決を下される可能性が高くなってしまうのです

    ② 過料を科される場合がある
    呼び出しを無視して正当な理由もなく離婚調停を無断で欠席した場合、裁判所から5万円以下の過料を科されるおそれがあります

    「過料」は行政上の処罰のことです。実際に徴収されるケースはほとんどありませんが、行政上の処罰の対象になるくらいに無断欠席は問題になるということに注意する必要があります。

3、離婚調停に向けて準備しておきたいこと

以下では、離婚調停を検討されている方が事前からしておくべき準備について解説します。

  1. (1)希望条件を整理する

    離婚調停に臨む前に、自分の希望する条件を決めておきましょう。

    離婚をしたくない場合は相手を非難したりせず、真摯(しんし)に対応することが重要なため、慎重に自分の意見や主張をまとめてください。
    また、離婚をしたい場合には、申立書に書かれた申立人の希望条件を確認しながら、以下の内容について自分の条件をまとめておきましょう。

    ① 親権
    子どもがいる家庭では、夫と妻どちらが親権者になるのか決めなければなりません。そこで自分としての希望を考えておく必要があります。

    ② 養育費
    親権を持たない非親権者は養育費を支払う義務があります
    自分が親権者になる場合は相手にいくら支払ってほしいのか、非親権者になる場合はいくら支払うのかまとめておきましょう。

    ③ 面会交流
    非親権者と子どもが交流をする「面会交流」について、頻度や交流方法の希望条件を考えておきましょう。

    ④ 財産分与
    夫婦で婚姻期間中に築き上げた財産を分けることを「財産分与」といいます。
    財産分与の対象になるものの整理や分け方に関する主張をまとめましょう。

    ⑤ 年金分割
    年金は過去に納めたお金に応じて65歳から毎年受け取ることができますが、夫婦が離婚する場合には婚姻期間中に納付した厚生年金を分割して、それぞれの年金にすることができます。
    年金分割をしないと将来受け取れる年金の金額が減ってしまうケースもあるため、年金事務所に事前に相談しておくと良いでしょう。

    ⑥ 慰謝料
    離婚の原因が「不貞行為」や「暴力」の場合は損害賠償請求として慰謝料の支払いを求めることができます
    相手に慰謝料を求める場合の金額や、自分が慰謝料を払う場合に支払える金額をまとめておきましょう。
  2. (2)相手の財産を確認しておく

    財産分与をするためには財産分与の対象となる財産を把握しておく必要があります。
    結婚してからの相手名義の貯金やへそくりも財産分与の対象となるため、まずは相手に通帳の開示を請求しましょう。

    相手から開示を拒否された場合には、「弁護士会照会制度」という方法によって確認することも可能です
    弁護士会照会制度は、仕事の依頼を受けた弁護士が職務を円滑に進めるために、必要な証拠や資料を収集する制度です。
    この制度を利用することで、金融機関に預金残高や取引状況の情報を開示するように請求することができます。
    ただし、照会制度を利用するためには弁護士に依頼することが必要です。

  3. (3)不貞行為や暴力があった場合証拠をそろえておく

    「不貞行為」や「暴力」があった場合には、証拠をおさえておくことが重要です。

    具体的には、不貞行為をされていた場合は以下の証拠を収集しましょう

    • 性交渉の写真や動画
    • 不貞行為を認めた会話の録音や念書
    • 配偶者と相手とのSNSやメールでのやりとり
    • ホテルの領収書やクレジットカードの明細書
    • 不貞行為について記載された日記や手紙
    • 不貞行為の相手との通話履歴
    • 興信所や探偵事務所からの報告書


    暴力を受けていた場合には、以下のような証拠を収集してください。

    • 医師の診断書
    • 暴力によって怪我した箇所や壊された物の写真
    • 暴力を受けている写真や動画
    • 暴力を受けていることについて記載した日記やメモ


    証拠が必要なる理由は下記の通りです。

    ① 離婚事由に該当することを証明するため
    離婚調停が仮に不成立となり離婚裁判を行う場合は「離婚事由」が必要になります。
    離婚事由は、裁判で離婚が認められるために必要な離婚原因のことです

    「不貞行為」や「暴力」は法律上離婚事由として認められていますが、証拠もない状態では裁判官に離婚を認めてもらうことはできません。
    そのため、「不貞行為」や「暴力」を理由に離婚をしたい場合は、離婚裁判まで進むことも想定して証拠を確保しておくことが大切です。

    ② 慰謝料請求をするため
    不貞行為や暴力に対する慰謝料請求をするためには、「不法行為を行われたこと」と「それによって傷ついたこと」を証明しなければなりません
    これらの事実を証明するためには、相手が言い逃れできないような証拠をそろえておくことが重要です。

    また慰謝料の支払いを相手が拒否して離婚裁判に進んだ際に、裁判官に「慰謝料請求は妥当である」と判断してもらうためにも、やはり証拠が必要となります。

4、離婚調停を申し立てられたら弁護士にご相談を

離婚調停を申し立てられると、調停期日の確認・調整や申立書に対する答弁書の作成、相手の財産の把握、証拠収集など、準備しなければならないことは多岐にわたります。
弁護士に依頼すれば、調停期日の調整を行ってもらうことや自分に不利にならないような答弁書の作成、証拠収集に関するアドバイスを得られます

また、ひとりで調停に臨むと自分の主張をうまく伝えられず相手との交渉がうまくいかない事態や、相手側に弁護士がついていてうまくやりこめられてしまい不利な条件で合意してしまうような事態を防ぐためにも、離婚調停を申し立てられたら、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

5、まとめ

離婚調停の呼び出し状が突然届いたら、「何をすればいいのかわからない」と混乱したり戸惑ったりしてしまう場合がほとんどです。
しかし調停期日までにやらなければならないことは多々あります。

自分に不利な状況に陥らないためにも、離婚調停の呼び出し状が、届いたらなるべく早めに弁護士に相談することが大切です。
まずはベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています