身元引受人とは|身元引受人になる条件や必要となるケース・注意点
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未成年者が警察に補導された場合や、警察から何らかの嫌疑で取り調べを受け、その後釈放される際などに、身元引受人を誰にするか警察に聞かれることがあります。このとき、身元引受人は誰でも自由に指定できるものなのでしょうか。また、逆に警察から身元引受人となるよう依頼を受けた場合、必ず引き受けなければないのでしょうか。
本コラムでわかることは、大きく以下の3つです。
・「身元引受人」とはどういったことをする人なのか
・「身元引受人」が必要となるケース
・「身元引受人」になる条件や気を付けるべき点
「身元引受人」という言葉は聞いたことはあるけど、いざ自分が当事者になった場合にどうしたらよいかわからないという方に向けて、ベリーベスト法律事務所 湘南藤沢オフィスの弁護士が解説します。
1、身元引受人とは
身元引受人について、法律上明確な定義はありませんが、一般的には「責任をもって身柄を引き受ける人」ということになるでしょう。典型的には、警察署に身柄を確保された人を迎えに行き、身柄解放後に監督する人が挙げられます。
なぜ、法律上の定義がないかというと、身元引受人というものが実務上の要請で必要とされているだけで、法律上必要とされているものではないからです。
ただ、身元引受人がいなければ、事実上身柄の解放を受けるのは困難ですので、実務上はとても重要なものであることは確かです。
警察としては、被疑者と一定の関係にある人に身元を託し、身柄引受書に署名・押印させることで、一定の監督機能が果たされると考えているわけです。
2、身元引受人が必要となるのはどのようなケース
身元引受人が必要になるのは、一般的には警察で取り調べなどを受けた後に釈放されるときです。警察が逮捕をする必要があると判断すれば、警察の方から身元引受人になるように求められることはないので、逆に言えば、身元引受人が求められる場合というのは、逮捕をされない場合ということになります。逮捕をされずに取り調べを受ける場合、それは任意の取り調べなので、本来であれば身元引受人がいなくても自由に帰ることができます。
しかし、警察の取り調べを拒否して帰ることを主張すれば、逮捕をされる可能性もありますし、警察から身元引受人を出すように求められた場合に、それを拒否することについても同様のリスクがありますので、身元引受人を指定して帰る方が無難と言えます。釈放された後は、通常の生活をする上で特に制限されることはありません。
警察から釈放されるとき以外には、たとえば弁護士が、被疑者の逮捕後に罪証隠滅や逃走のおそれがないとして釈放を求める場合や、起訴後に勾留されて保釈請求する場合にも、身元引受人がいることを示すことがあります。また、刑事裁判において、執行猶予付きの判決を求める場合にも、身元引受人が情状証人として出廷し、「責任をもって監督します」といった内容の証言をするのが一般的です。
3、身元引受人の責任範囲(やらなければならないこと)
身元引受人を頼まれた場合に気になるのが責任の範囲です。刑事事件の身元引受人には、どのような責任が生じるのでしょうか。
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(1)任意捜査の段階
身元引受人の責任の範囲は、刑事手続きの場合、基本的に証拠隠滅と逃亡走を防止することです。間接的には、被害者へのさらなる危害の防止や自殺の防止なども含まれます。ただ、これらの事実が発生したからといって、積極的に関与したということでなければ、刑事上の責任を問われることは基本的にはありません。
身元引受人に身柄を引き渡す行為というのは、警察の立場からすれば、自身の責任を軽減する意味合いを持っています。嫌疑が不十分であったり、逮捕するまでもない事件であるけれども、何の担保もなく釈放をして再び犯罪を起こしたり、逃走されて連絡が取れなくなってしまった場合には、「警察は何をしているのだ」と批判を浴びるので、「被疑者を身元引受人に引き渡し、やるべきことはやっています」ということを主張できるようにしているという側面もなるわけです。
したがって、身元引受人になったからといって必要以上に不安になる必要はありません。具体的に何かをする義務を負うわけではないことが一般的ですし、定期的に被疑者の様子を警察に報告をしなければならないわけでもありません。とはいえ、身元引受人になる人は、親族であることがほとんどですので、本人のことを考えて逮捕されることのないようにできるだけ行動を監視したり、任意の取り調べに応じるよう促すなど、責任をもった行動が期待されます。 -
(2)逮捕・勾留後の場合
逮捕・勾留後に釈放を求める場合や、起訴後に保釈請求をする場合には、被疑者・被告人を十分に監督することを明らかにするために、弁護士が身元引受人の監督内容を具体的に提示する場合があります。このような場合には、決められた内容を順守する必要があります。
たとえば、保釈の条件で、被疑者が指定された住居地と身元引受人の住居地が同じである場合、被疑者と身元引受人は同居しなければなりません。違反した場合には、保釈が取り消されてしまうこともあります。
また、保釈中に本人が逃亡や証拠隠滅を行った場合、保釈金は没収されてしまうことが多いので、身元引受人が保釈金を負担しているような場合には注意が必要です。 -
(3)懲役刑を受けている場合
すでに刑務所に収監され懲役刑を受けている場合でも、①有期刑の刑期が3分の1以上経過した者か、無期刑であれば10年以上経過した者で、②改悛(かいしゅん)の情が認められる者については、仮釈放を認められることがあります。仮釈放の許可をするかどうかの判断においては、身元引受人の存在が重要になります。
4、身元引受人になる条件
身元引受人という言葉自体が法律で規定されていないので、身元引受人になる条件についても法律では決められていません。ただ、実務上は警察が身元引受人にふさわしくないと思えば身元引受人として認めてもらえずに釈放されないため、結局は親族か会社の上司など、本人を引き取って監督できる立場の人という事実上の条件は存在することになります。
一般的に、身元引受人としてふさわしくないと判断される可能性が高いのは友人です。家族や会社に知られたくないため、友人を身元引受人にしたいと考える方もいるかもしれませんが、本人を監督できるだけの友人かどうかは一見して判断はできないので、捜査機関としては認めにくいという事情があります。
ただ、親族が近くに住んでいない場合など他に適切な人物がいない場合には、信頼のおける友人であることを説得的に説明することにより、認められる場合もあるでしょう。
5、身元引受人になるとき覚えておくべきことや注意点
被疑者が逃げたとしても刑事責任を負う可能性は低いとはいえ、被疑者と身元引受人とは密接な間柄のはずですから、再び犯罪に手を染めたり、逃走や罪証隠滅で逮捕されることは避けたいでしょう。
そのため、できるだけ身近にいるとともに、話を聞いてあげるなどして、被疑者の支えになるように努める必要があります。嫌疑の内容にもよりますが、警察の取り調べ要請や、裁判所からの呼び出しには必ず出頭させるようにしてください。
特に、警察からの取り調べ要請に応じない場合には、逮捕されてしまうこともありますので、釈放されたからと言って油断はしないようにしてください。
また、再度別の罪を犯したような場合には、その身元引受人は適任者ではないと判断される可能性もあります。その場合、別の身元引受人を探さなければならなくなることもありますので、しっかりと監督してください。
6、身元引受人を降りることは可能?
身元引受人となったものの、後になって降りることはできるのでしょうか。結論からいうと可能です。
そもそも、身元引受人自体が法的な制度ではないので、いつでも辞めることができます。ただし、一度辞めた場合には、次にその人の身元引受人になると言っても認められなくなる可能性はありますし、別の身元引受人を立てられなければ、被疑者や被告人に不利益な結果が生じてしまうかもしれませんので、よく考えてから行動に移すようにしてください。
7、まとめ
以上みてきた通り、身元引受人になることについては、それほど心配する必要はありませんが、身元引受人が必要になった場合に誰に頼むのかを事前に考えておくと安心です。
自分が犯罪をすることはないから大丈夫と思われるかもしれませんが、痴漢の冤罪や不当な交通取り締まりなど、いつ犯罪者として扱われるかわかりません。いざそうなったときに頼りになるのは弁護士です。
警察署への連行されてしまった場合に、その場で弁護士を探すのは困難です。法律事務所の電話番号を携帯電話に登録しておくなど、事前の対策が重要です。
ベリーベスト法律事務所・湘南藤沢オフィスには刑事弁護の経験豊富な弁護士がおります。刑事事件に関わる不安や悩みをお持ちのようでしたら、お気軽に当事務所の弁護士までご相談ください。
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