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子ども同士のケンカでケガをした! 損害賠償請求をする方法とは?

2021年04月15日
  • 一般民事
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子ども同士のケンカでケガをした! 損害賠償請求をする方法とは?

人間誰しも、人と関われば意見の食い違いや価値観の違いなどでケンカに発展することはあります。ましてや子ども同士の場合は特に、感情のコントロールができずにケンカに発展することも多いものです。

令和2年8月の神奈川県の発表では、県内には887校の小学校、473校の中学校、231校の高等学校があるということですが、ある日、自分の子どもがケンカをしてケガをする、あるいは、相手にケガをさせてしまうということもあるかもしれません。そんなときに、損害賠償の請求はできるのでしょうか。また、損害賠償の請求ができるとした場合、それは誰に対してできるのでしょうか。

今回は、子どもの同士のケンカでケガをした場合の損害賠償請求についての考え方や、手続きの流れなどについてベリーベスト法律事務所 湘南藤沢オフィスの弁護士が解説していきます。

1、子ども同士のケンカで損害賠償請求はできる?

ケンカによってケガをした場合、加害者には治療費や慰謝料などの損害賠償の支払い義務が生じます。ただ、ケンカの場合は双方がケガをすることもあり、その場合にはお互いに被害者でもあり、加害者でもあることが多いので、双方に治療費や慰謝料を支払う義務が生じることもあります。「どちらの非が大きいのか」といった事情は、それぞれの賠償額で調整されることになります。

問題は、ケンカをしたのが「子ども」という点です。損害賠償請求をする場合、請求相手は基本的に加害者本人になるので、加害者である子どもに請求するのが原則ということになります。では、5歳同士のケンカで5歳の子どもに損害賠償請求ができるのでしょうか。これは直感的に無理だろうと思う方も多いでしょう。

民法では、「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない(民法第712条)」と規定しています。自己の行為の責任を負うことができる能力という意味を指す「責任能力」いう概念があり、責任能力がなければ損害賠償をする義務もないことになります。このことから、責任能力のない未成年者が相手にケガをさせた場合であっても、その未成年者自身は損害賠償の責任を負いません。

ただ、その場合は未成年者の監督者(民法上は監督義務者といいます)が原則的には賠償責任を負うことが民法714条に規定されています。したがって、責任能力のない子ども同士のケンカでケガをした場合、原則的には監督義務者である親に損害賠償請求をすることができることになります。

ここで、「基本的に」と限定しているのは、監督義務者(未成年者であれば親権者など)が守るべき義務を怠らなかったときや、義務を怠らなくても損害が発生することは避けられなかったといえるときには損害賠償責任を負わないことになっているからです。

また、監督義務者に代わって責任能力がない者(責任無能力者といいます)を監督する者も損害賠償責任を負う場合があります。監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者の例として、幼稚園や小学校の職員が考えられます。幼稚園の職員は、子どもがケンカをしないよう親に代わって監督する義務があるので、過失が認められれば代理監督者として賠償責任を負うわけです。

2、損害賠償の範囲

ケンカでケガをさせられた場合の損害には、どのようなものが含まれるのでしょうか。一般的には、以下の費目が請求できると考えられます。

  1. (1)治療費

    ケガを治療するのに病院に行った場合、加害者には治療費を請求することができます。通院であれば、診察代、検査代、薬代などの費用が該当します。入院の場合には、それに加えて、入院費、入院中に必要な雑費も含まれます。また、重傷の場合や医師の指示がある場合には、例えば介護士などの職業付添人の費用や、近親者が付き添った場合の費用(日額5000円〜7000円)も請求することができます。

  2. (2)慰謝料、逸失利益

    ケガによって後遺症が残った場合には、「後遺症慰謝料」を請求することができます。後遺症が残った部位や程度にもよりますが、慰謝料の額はかなり高額となります。また、例えば後遺症が残って歩行が困難になった場合などは、大人になってからできる仕事も限られてきますので、逸失利益も請求することができます。逸失利益とは、事故がなければ将来働いて得られたであろう利益のことです。

    後遺症が残らなかった場合であっても、病院への入通院の期間や通院回数に応じて、慰謝料を請求することができます。

  3. (3)交通費

    通院の際にかかった交通費や、怪我によって余計にかかってしまった交通費についても請求することができます。たとえば、足を骨折したため、徒歩で通学ができず、自家用車もバスもないためタクシーを利用したというような場合には、通学にかかったタクシー代を請求することができます。また、同様に病院にも歩きで行けない場合には自宅から病院までの交通費(電車代、バス代、タクシー代など)を損害賠償として請求することができます。

3、誰に対して損害賠償請求をするのか?

損害賠償請求をする相手方は、まずケンカをした子ども自身に責任能力があるかどうかを判断して、責任能力がある場合にはその子ども本人に請求し、責任能力がない場合には親などに請求するということになります。

過去の裁判例からすると、責任能力があるか否かの分かれ目の年齢は、11歳~12歳前後なので、小学生までは親の責任と覚えておくと良いでしょう。逆に、中学生以上は、基本的に中学生本人に責任能力があると判断される可能性が高いため、ケンカをした本人に損害賠償請求をすることになります。

もっとも、これは理論上の話であって、実際には中学生に損害を賠償するだけの資力はありませんので、中学生相手に損害賠償請求をしたところで意味はありません。したがって、実際にはケンカをした子どもの親に請求することになるでしょう。

ケンカをした子どもに責任能力がある場合には、民法714条に基づいて監督義務者に請求をすることができませんので、一般の不法行為責任について規定した民法709条を根拠に親自身の責任を追及していくことになります。

どちらにせよ、親に請求できるなら民法714条でも民法709条でも変わらないではないかと思われるかもしれませんが、民法714条に基づいて請求をする場合は、加害者自身に不法行為が認められることを前提に、加害者側の親が自身に監督義務違反がないことを主張・立証しなければ賠償責任を免れることはできません。無過失であることが認められない限り損害賠償請求が認められるわけです。他方、民法709条での請求の場合は、被害者側が加害者の親に過失責任があることを主張・立証しなければなりません。

子どものケンカの責任が親にあることを主張・立証することは非常に難しいため、被害者としては、加害者が責任無能力者である場合の方が圧倒的に有利になります。

714条に基づく請求で親の過失が認められなかった判例をひとつご紹介します(最判平成27年4月9日)。この事件は、学校の校庭でサッカーをしていた小学6年生の男児(当時11歳)が蹴ったボールが道路に飛び出し、それをよけようとした男性(80代)が転倒して、約1年半後に死亡したというものです。

その男性の遺族が少年の両親に対して損害賠償を求めた裁判で、最高裁判所は、子が親権者の直接的な監視下におらず、「通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は、当該行為について具体的に予見可能であるなどの特別の事情が認められない限り、子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきではない」という判断を示しています。この事案は、「通常は人身に危険が及ぶものとは見られない行為」によって人身に損害を生じさせたという事情があったので、親の責任が否定されましたが、一般的には親が民法714条の責任を免れるのは難しいことには違いがありません。

4、損害賠償請求の手続きの流れ

損害賠償請求をする場合、まずは証拠を確保することが重要になります。最初は加害者の親も平謝りをしていて、賠償はしますと話していても、時間がたつにつれて子どものケンカで両方が悪いのだから、賠償などしないと開き直ることはよくあります。

また、裁判となれば、これまで認めていた人も弁護士に依頼をして事実関係を否定し始めることもあります。そのような場合に証拠がなければ争うこと自体が難しいですし、裁判で勝つことは到底できません。

では、具体的にどのような証拠を集めるかという点ですが、ケンカの状況がわかる、防犯カメラの映像があれば非常に有効です。防犯カメラなどの直接的な証拠がない場合は、現場の写真を撮影した上で、目撃者からの証言を陳述書という形でまとめておくといいでしょう。できれば、複数の目撃者の陳述書があるとより信用性が高まります。

陳述書を作成する場合には、事故が起きてからすぐに行うことが重要です。人間の記憶はあいまいなので、時間がたつと記憶が薄れてしまうからです。記憶が鮮明なうちに、被害を受けた子ども自身や近くにいた人に事故の具体的な状況を聞いて、陳述書としてまとめておきましょう。陳述書は、裁判が始まってから作成したのでは信ぴょう性が疑われることがありますので、裁判より前に存在していたと証明するために、公証役場で「確定日付」のある陳述書を取得しておくことが望まれます。

証拠がそろったら、損害額の算定をしましょう。治療費や、通院交通費などは、領収書等金額がわかる資料を用意しましょう。慰謝料については、これまでの裁判例等からある程度の相場が決まっていますので、それを基に算定することになります。

損害額が算定できたら、まずは加害者側に直接請求をしてみるといいでしょう。加害者側が反省していたり、大事にしたくないと考えていれば、そのまま支払ってもらえるかもしれません。それでお金が支払われれば、簡便に解決することができるでしょう。加害者側から応じられない旨の連絡が来た場合には、裁判をすることになります。

裁判では、専門的な知識や論理的な書面の作成、有効な証拠の提出といった作業が必要になりますので、弁護士へ相談することをおすすめします。

5、まとめ

今回は、子ども同士がケンカをした場合に、損害賠償請求ができるかというテーマで解説してきました。子ども同士のケンカなので、多少のケガであればお互いに謝ることで終わらせるという解決でもいいように思います。

しかし、病院に行くほどのケガということになれば、そう言っていられないので、親として加害者にはしっかり損害賠償請求をすることも考えなければなりません。そんなときに、慰謝料の算定方法や訴訟の進め方など、わからないことや不安におもうことは弁護士に相談することをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所 湘南藤沢オフィスでは、民事事件の経験豊富な弁護士が在籍しております。子どものケンカで相手に損害賠償を請求したいという場合には、どうぞご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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