旦那が嫌いで離婚したい場合の進め方とは? 離婚前の大事な準備

2024年04月08日
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旦那が嫌いで離婚したい場合の進め方とは? 離婚前の大事な準備

神奈川県藤沢市が公表している統計資料によると、令和2年の藤沢市内の離婚件数は629件でした。離婚率は、1.44でしたので、神川県内(1.50)および全国(1.57)の離婚率に比べて低い水準であるといえます。

結婚当初は仲の良かった夫婦であっても、一緒に生活を続けるにつれて相手のことが嫌いになってしまうこともあります。なかには、一緒に生活するのが苦痛に感じてしまうため、離婚を考える方もいるでしょう。しかし、そもそも「嫌い」という理由だけで離婚することができるのでしょうか。

今回は、「旦那が嫌いで離婚したい」方に向けて、離婚の進め方と準備について、ベリーベスト法律事務所 湘南藤沢オフィスの弁護士が解説します。

1、「旦那が嫌い」という理由だけで離婚できる?

「旦那が嫌い」という理由だけで離婚することができるのでしょうか。

  1. (1)「旦那が嫌い」で離婚するには離婚に合意してもらう必要がある

    旦那が嫌いという理由は、いわゆる性格の不一致による離婚ですので、離婚の理由としては一般的な理由になります。多くの夫婦が性格の不一致により離婚を選択していることから、「旦那が嫌い」という理由で離婚することもできますが、そのためには旦那が離婚に合意してくれなければなりません。
    そのため、まずは、旦那としっかり話し合いをして離婚に応じてもらえるよう求めていきましょう。

  2. (2)離婚に合意してくれないときは法定離婚事由が必要

    相手が離婚に合意してくれない場合には、話し合いでの離婚は困難ですので、離婚調停を申し立てる必要があります。離婚調停でも離婚に合意してくれない場合は離婚訴訟を提起して裁判所に判断してもらう必要があります。離婚裁判では、離婚するにあたって相手の合意は必要ありませんが、以下のような法定離婚事由が必要です

    • 不貞行為
    • 悪意の遺棄
    • 3年以上の生死不明
    • 強度の精神病にかかり回復の見込みがない
    • その他婚姻を継続し難い重大な事由


    「旦那が嫌い」という理由は、これらの法定離婚事由のいずれにも該当しません。そのため、旦那が離婚に同意してくれない場合、旦那が嫌いという理由だけでは、離婚するのは難しいといえます。旦那とどうしても離婚したいという場合には、「旦那が嫌い」という理由以外の法定離婚事由が必要になります

2、嫌いな旦那との離婚を進める3つの方法

嫌いな旦那と離婚する方法には、以下の3つの方法があります。

  1. (1)話し合いで進める協議離婚

    協議離婚とは、夫婦の話し合いにより離婚する方法です。相手と話し合いをして、離婚に同意してくれれば、離婚届を記入し、提出することで離婚成立となります。
    相手との話し合いでは、「あなたのことが嫌いだから離婚したい」と伝えても、納得してくれる人は少ないです。どういうところが嫌いなのか、なぜ一緒に生活していけないのかなどを丁寧に伝えることで相手の納得が得られる可能性が高くなりますので、感情的にならず冷静に話し合いを進めていきましょう。

  2. (2)旦那が離婚に合意しない場合は離婚調停を申し立てる

    旦那と話し合いをしても、旦那が離婚に合意してくれないときは、これ以上話し合いを続けても離婚が成立する見込みはありません。このような場合には、話し合いを打ち切って、家庭裁判所に離婚調停の申し立てを行いましょう。
    離婚調停は、協議離婚と同様に話し合いにより離婚の合意を目指す手続きになりますが、夫婦が直接顔を合わせる必要はなく、調停委員が合意に向けた働きかけをしてくれます。そのため、協議離婚で離婚の合意が得られないケースでも離婚調停をすることで離婚が成立する可能性もあります。
    ただし、調停成立には旦那の合意が必要になりますので、どうしても離婚に合意してくれない場合には、離婚調停は不成立になります。

  3. (3)離婚調停でも合意しない場合は離婚裁判を提起する

    離婚調停が不成立になったときは、最終的に家庭裁判所に離婚裁判を提起します。
    離婚裁判は、相手の合意がなくても離婚することができますが、離婚するには法定離婚事由が必要になります。「旦那が嫌い」という理由だけでは、法定離婚事由には該当しませんので、その他に法定離婚事由に該当する事情があるかどうかを吟味した上で、離婚訴訟の提起を検討する必要があります。
    法定離婚事由の有無は、法的判断が必要な事項になりますので、自分だけでは判断できない場合には、弁護士に相談するのがおすすめです

3、嫌いな旦那と離れたくても勝手に別居するのはNG!

旦那が嫌いになると一日でも早く離れたいと考えるかもしれません。しかし、勝手に別居するのは、以下のような理由からNGです。

  1. (1)勝手に別居すると「悪意の遺棄」に該当する可能性がある

    離婚する前に別居をするというのは、よくある選択肢のひとつです。しかし、相手と話し合わずに勝手に家を出ると「悪意の遺棄」に該当する可能性があります。
    悪意の遺棄とは、正当な理由なく夫婦間の義務を履行しないことをいいます。婚姻した夫婦には、法律上、同居義務・協力義務・扶助義務という3つの義務が課されます。悪意の遺棄は、これらの義務を怠ることをいい、具体的には以下のような行為が挙げられます。

    • 正当な理由なく同居に応じない
    • 健康で働ける状態であるにもかかわらず働かない
    • 収入があるにもかかわらず生活費を渡さない


    悪意の遺棄に該当する別居は、夫婦関係の破綻を積極的に企図して行われたものを指しますので、勝手に別居したからといって直ちに悪意の遺棄に該当するわけではありません。しかし、状況によっては悪意の遺棄に該当するリスクがありますので、相手ときちんと話し合いをしてから別居をするようにしましょう。

  2. (2)悪意の遺棄に該当することにより生じるリスク

    万が一、勝手に別居したことが悪意の遺棄に該当してしまうと、離婚にあたって以下のようなリスクが生じます。

    ① 有責配偶者として離婚請求ができなくなる
    悪意の遺棄に該当する行為をした人は、有責配偶者に該当します。有責配偶者は、自ら婚姻関係を破綻に導いた責任のある人ですので、信義則上、有責配偶者からの離婚請求が制限されてしまいます
    そのため、旦那が嫌いで離婚したいと思っても、有責配偶者である以上、離婚請求が認められず、いつまでも離婚できない事態になってしまいます。

    ② 有責配偶者として慰謝料を請求される
    有責配偶者に該当する場合には、相手から慰謝料を請求されるリスクも生じます。そのようなリスクを回避するためにも、旦那と話し合わずに勝手に家を出るというのは避けるべきでしょう。

4、旦那と離婚する前に進めておくべき大事な準備

嫌いな旦那と離婚する前に、以下のような準備を進めておきましょう。

  1. (1)離婚後の生活費や住居の確保

    離婚をすると夫婦の扶助義務は消滅しますので、旦那から生活費をもらうことができなくなります。お互いの別々の財布で生活していたのであれば問題ありませんが、専業主婦など旦那の収入により生計を維持していたような場合は、離婚後の生活費を確保する必要があります。そのためには、就職先を見つける必要がありますので、早めに行動するようにしましょう。

    また、離婚後に自宅を出ていかなければならない方は、離婚後の住居を確保する必要があります。実家が近くにあるという方は、しばらくの間実家のお世話になるというのもひとつの選択肢になりますが、そうでない方はアパートなどを借りなければ生活できなくなってしまいます。すぐに希望する物件が見つかるとは限りませんので、こちらも早めに行動することが大切です。

  2. (2)婚姻費用の請求

    離婚する前に別居をする場合には、収入が夫より少ない妻側から別居期間中の生活費を請求することが可能です。このような生活費を「婚姻費用」といいます。
    婚姻費用は、腰を据えて離婚の話し合いを進める上で大切なものになりますので、しっかりと請求していくようにしましょう。婚姻費用の金額は、お互いの話し合いで自由に決めることができますが、相場を把握したいという場合には、裁判所が公表している婚姻費用の算定表を利用するのがおすすめです。婚姻費用算定表は、お互いの収入と子どもの有無・人数がわかれば簡単に婚姻費用の相場を知ることができるツールですので、積極的に利用していくとよいでしょう。

  3. (3)財産分与に向けた財産調査

    夫婦の共有財産は、財産分与によって分けることができます。専業主婦であっても、家事や育児などによって旦那を支えていますので、基本的には2分の1の割合で財産分与を受ける権利があります。
    ただし、適正な財産分与を実現するためには、その前提としてお互いのすべての財産を開示する必要があります。旦那が財産隠しをしているという疑いがある場合には、しっかりと財産調査を行い、旦那の財産を明らかにしなければなりません。

  4. (4)慰謝料請求のための証拠収集

    旦那が不倫、DV、モラハラなどの行為をしていた場合には、離婚時に慰謝料を請求することができます。しかし、慰謝料請求にあたっては、旦那がそのような行為をしたことについて、証拠により立証していく必要があります。
    相手に離婚を切り出してからでは証拠収集が困難になりますので、離婚を切り出す前から証拠収集を始めることが大切です

5、まとめ

旦那が嫌いという理由で離婚することも可能ですが、そのためには、離婚に合意してもらわなければなりません。また、旦那が嫌いになると一緒に生活するのが苦痛になり、勝手に自宅を出て行こうとする方もいますが、無断で別居するのはリスクのある行為ですので避けましょう。

旦那が離婚に合意してくれない場合には、法定離婚事由の有無によって離婚の進め方が変わってきます。弁護士に相談すれば、離婚の進め方に関してアドバイスを受けられますので、旦那との離婚でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 湘南藤沢オフィスまでご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています