熟年離婚で決めておくべきことは? 生活費や年金はどうなる?

2020年02月07日
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熟年離婚で決めておくべきことは? 生活費や年金はどうなる?

平成28年における、神奈川県藤沢市在住の方の離婚率が1.58でした。全国平均は1.73、神奈川県全体では1.74ですから、藤沢市在住で離婚を決意した夫婦は、他地域に比べて多くはないといえるでしょう。

離婚をする場合、慰謝料や財産分与などの大きなお金のやり取りや各種手続きが必要となることがあります。トラブルに発展するケースも少なくなく、離婚は結婚よりも大変だとも言われています。さらに、熟年離婚をする場合、土地や住宅、退職金などの財産分与が離婚後の生活に大きく関わってきます。

熟年離婚の場合、離婚後の安定した生活をどのように確保するのかが非常に重要になるでしょう。そこで、今回はベリーベスト法律事務所 湘南藤沢オフィスの弁護士が、熟年離婚の際に決めておくべきことや年金、財産分与などのお金の問題について解説します。

1、離婚をするために必要なこと

離婚をするためにまず必要なのは、「双方の同意」です。双方が離婚に同意した上で、お金の問題などさまざまなことを話し合います。

しかし、相手方の同意が得られない場合には、家庭裁判所に申し立てて「離婚調停」をすることになります。離婚調停では、家庭裁判所が中立の立場で間に立ち、話を進めます。男女1名ずつの調停委員という第三者を介することで、基本的には当事者同士で顔を合わせる必要がありません。感情的になり過ぎず、落ち着いて話し合いができることがメリットといえます。

実際のところ、初めは離婚問題でもめていた夫婦でも、最終的には離婚調停で決着がつくケースが多い傾向にあります。とはいえ、調停の中で合意をすることができなければ、訴訟手続に移行することも可能です。

裁判では、双方の主張をもとに、離婚を認めるかどうか、財産分与の対象財産の決定や分配方法、慰謝料の金額などが判断されます。スムーズに離婚裁判を進めるためには、夫婦共有財産の種類、年金の支払履歴、相手の落ち度の有無などを前もって確認しておき、可能であれば自分の主張を裏付ける証拠を用意しておくとよいでしょう。

2、熟年離婚で起こりやすいトラブル

熟年離婚で起こるトラブルの多くが「お金の問題」です。ここではトラブルになりやすいお金の問題を解説いたします。

  1. (1)年金分割について

    婚姻期間中、少なくとも夫婦のどちらかが厚生年金に加入していた場合には、離婚する夫婦のいずれかの請求で、これまで納付をしてきた記録を分割する制度があります。これを「年金分割」といいます。

    第3号被保険者(会社員や公務員等の配偶者で、年収130万円未満の方)であった方にとっては、年金を受け取れるようになったとき、受け取れる金額が増加しますので、将来の生活の支えとなります。第1号被保険者の場合は、反対に将来受け取れる年金額が減ることになります。なお、年金分割は、将来支給される額自体を分割するわけではない点に注意が必要です。

    年金分割は離婚届を提出したからといって自動的に行われるものではありません。離婚後に手続きを行う必要があります。年金分割には、「合意分割制度」と「3号分割制度」があります。いずれも、離婚から2年以内に請求する必要がある点に注意が必要です。

    ●合意分割制度
    双方の話し合いによって分割する割合を決定したのち、申請する制度です。話し合いで合意に至ることができない場合は、裁判所を利用した手続を行うことになります。

    ●3号分割制度
    以下の2つの条件に該当するケースは、相手の合意が得られなくても平成20年4月1日以降の厚生年金記録を2分の1ずつに分割する「3号分割制度」を利用することができます。
    ①平成20年5月1日以降に離婚した
    ②婚姻期間中に平成20年4月1日以降の厚生年金記録がある

  2. (2)財産分与について

    財産分与とは、夫婦の共有財産を離婚時に分ける制度です。共有財産とは、夫婦の協力のもとに築いた財産を指します。夫名義の家、土地、車や、妻名義の預貯金でも、結婚期間中に購入したものであれば原則として共有財産になりますので、2人で分けることになるのが通常です。

    ただし、それぞれの親から贈与された物や、相続した財産、結婚前から所有していた物は共有財産ではありませんので、財産分与の対象外です。

    財産分与の割合は、それぞれの収入等に関わらず、2分の1で分けるのが原則とされています。妻が専業主婦だとしても、通常は2分の1を受け取る権利があるのです。

    財産分与は「どの財産が対象か」という点と、「どの割合で分割するのか」という点がトラブルになりやすい傾向にあります。分割したくないがために財産を隠すケースもありますので、離婚を成立させる前にきちんと財産を把握しておきましょう。

  3. (3)慰謝料について

    慰謝料は、配偶者から受けた精神的苦痛に対して支払われる賠償金のことです。配偶者が不倫をしていた、暴力を振るっていた、生活費を一切支払ってくれなかったなどのケースでは、慰謝料の請求が認められる可能性があります。

    慰謝料を請求するためには、相手の落ち度を証明する証拠が必要です。特に相手が認めない場合は交渉が難しくなりますので、弁護士に相談した上で対策を練りましょう。

3、離婚の進め方

離婚に対する意見が一致すれば、離婚届を役所に提出して手続きは終了です。しかし、熟年離婚のように共有財産の額が大きい場合には「離婚協議書」を作成して公正証書にしておくことをおすすめします。

慰謝料の支払いや、財産分与の内容を口約束で済ませてしまうと、後々もめてしまうことがあります。そのときには証拠が残っていないために、追及することが困難になってしまうこともあるでしょう。
しかし、離婚協議書の中に約束した内容を記載しておけば、合意の内容を証拠として残すことができます。さらに、公正証書にしておくことで、相手が支払いを怠った場合には、相手の給料や預金を差し押さえることができるというメリットがあります。

多少の費用や時間はかかってしまいますが、今後の生活を守るためにも離婚協議書を作成して公正証書にしておくと安心です。

熟年離婚のケースで特に話し合っておきたいのは、ここまでも紹介してきた年金分割、財産分与、慰謝料の問題です。さらに未成年の子どもがいる場合には、親権や養育費をどうするのかということも話し合い、離婚協議書に残しておきましょう。

もし配偶者の退職時期が近いのであれば、退職金の財産分与の話し合いも必要となるでしょう。

4、弁護士に相談したほうがよいケース

熟年離婚の場合には分与される財産が大きいことなどから、トラブルに発展しやすい傾向にあります。スムーズに話し合いが進まない場合には、当事者同士で話し合うのではなく、弁護士に交渉を一任しましょう。特に、財産分与の対象と考えられる財産の額が大きい場合や、相手に不貞行為などの落ち度がある場合には、弁護士に依頼をして進めたほうが有利な解決となる可能性が高まります。

熟年離婚では、お金の問題がメインとなるケースがほとんどです。特に、主婦やパート等で収入のほとんどを夫に頼ってきた女性にとっては、財産分与や慰謝料、年金分割の結果が離婚後の生活を大きく左右します。今後の生活を安定させるために、正当な権利はしっかりと主張して、本来受け取るべき財産を確保しましょう。そのためには、まずは専門家である弁護士に相談することをお勧めします。

5、まとめ

熟年離婚では共有財産の額が大きくなることが多く、財産分与などの金銭的問題がトラブルの元となります。さらには、退職金も視野に入れて離婚を進める必要がある場合も多いでしょう。

そこで、話し合いでまとまりそうな場合には、離婚協議書を作成した上で、公正証書にしておくことが重要です。一定の条件を充たした公正証書を作成しておけば、万が一の場合には強制執行をすることができるようになります。
また、話し合いで合意できそうにない場合には、離婚調停、離婚裁判と進んでいくことになり、手間や時間もかかってきます。
これらの手続きや書類作成などをスムーズに進めたいのであれば、弁護士に依頼したほうがよいでしょう。

まずは、ベリーベスト法律事務所 湘南藤沢オフィスに相談ください。熟年離婚問題の対応実績が豊富な弁護士が、あなたの新しい人生のために親身になってアドバイスします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています