夫が児童買春で逮捕されたら家族はどう動くべき? 弁護士が解説
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近年はSNSをはじめインターネットを介して見知らぬ者同士が簡単に出会えるようになりました。SNSをきっかけとした性犯罪事件は連日のように報道されており、中には未成年が事件に巻き込まれることも少なくありません。もし、自分の夫や身内が児童買春をした側とされて逮捕されてしまった場合、どのように行動すればよいのでしょうか。
あなたの家族がどのような罪に問われるのか、早急に適切な対策を取る方法など、湘南藤沢オフィスの弁護士が解説します。
1、児童買春で逮捕された場合に問われる罪は?
児童買春で逮捕された場合、いくつかの罪に該当する可能性があります。それぞれ確認していきましょう。
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(1)児童買春罪
18歳に満たない者(これが次の法律でいう「児童」です)に対償(金銭など)を渡したりその供与の約束をした上で性交渉などの行為に及ぶと、「児童買春・ポルノ禁止法」の第4条に定められた「児童買春罪」にあたります。「児童買春・ポルノ禁止法」の正式名称は「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」です。その名のとおり児童の保護を目的として制定された法律で、その観点から一定の行為を規制、処罰するものです。
児童買春罪に問われて有罪になれば、5年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられます。 -
(2)青少年保護育成条例違反
青少年保護育成条例は、その名のとおり「条例」です。したがって、都道府県ごとに内容、条例名が若干異なります。
藤沢市がある神奈川県の場合、「神奈川県青少年保護育成条例」という名称の条例が定められています。名前のとおり、青少年の健全な育成を図ることを目的として施行された条例であり、ここでいう「青少年」とは「満18歳に達するまでの者」と定義されているので、先の「児童買春・ポルノ禁止法」の「児童」と基本的に同じと考えて良いでしょう。 同条例第31条1項には「何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない」と定められています。
ここでいう「みだらな性行為」とは、同第31条3項によれば、「健全な常識を有する一般社会人からみて、結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交」であり、さらに「わいせつな行為」とは「いたずらに性欲を刺激し、又は興奮させ、かつ、健全な常識を有する一般社会人に対し、性的しゆう恥けん悪の情をおこさせる行為」と定義されています。
この点で、18歳未満の相手と「みだらな性行為」や「わいせつな行為」をした場合、金銭などを渡したかどうかに関係なく青少年保護育成条例第31条1項に違反したことになり、2年以下の懲役、もしくは100万円以下の罰金が科せられます。 -
(3)強制わいせつ罪、強制性交等罪(強姦罪)
まず、脅迫や暴行を用いて、相手とわいせつな行為を行った場合は強制性交罪、性行為にまで及んだ場合は強制わいせつ罪に問われます。買春は、通常は脅迫や暴行を用いるわけではなく、お金を与えてあくまで同意のうえで性行為などを行うものですから、原則としてはこれらの罪には該当しないはずですが、ただし、相手が13歳未満であった場合は、暴行や脅迫がなくても(お金を渡したり相手の同意があったとしても)強制わいせつ罪や強制性交罪が成立します。
強制わいせつ罪については6月以上10年以下の懲役、強制性交罪は5年以上の有期懲役が科されます。
2、相手が18歳未満だと知らなかった場合の処罰
児童買春罪や青少年保護育成条例違反の罪は、相手が18歳未満の場合に限られており、18歳以上の場合は犯罪は成立しません。
それでは、相手が実際は18歳未満だったけれども、それを知らずに18歳以上だと思い込んで、結果として児童買春罪や青少年保護育成条例違反にあたる罪を犯してしまった場合は、どうなるのでしょうか。
まず児童買春の罪は、18歳未満であることを本当に知らなかったのであれば、「故意」(罪を犯す意思)がそもそもなかったことになるので、成立しないことになります。ただ、実際に逮捕されて取り調べられたり、さらに起訴されて裁判を受けることになった場合に、その主張を信じてもらえるかどうかは別問題です。本当に相手が18歳未満であることを知らなかったのかどうか、その行為当時やそこに至るまでの状況(SNS等によるやりとり、相手の言動、外見その他)に照らして問われることになるでしょう。
次に、青少年保護育成条例第31条1項違反の罪はどうでしょうか。これは同条例第53条7項に「当該青少年の年齢を知らないことを理由として(…)処罰を免れることができない。」とされており、18歳未満であることを知らなかったというだけでは処罰を免れることができず、児童買春よりも厳しい規定になっています。
もっとも同条例では、その後で「ただし、当該青少年の年齢を知らないことに過失がないときは、この限りでない。」とも規定されており、過失がなく18歳未満であることを知らなかった場合は、例外的に罪にあたらないこととされています。どのような場合に「過失がない」と判断されるかは難しい問題ですが、十分な注意を払ったとしても相手のことを18歳以上だと思い込んでしまうのがやむを得ないような状況であれば、これに当たると考えられるでしょう。
3、児童買春で逮捕された場合に取るべき行動
以上見てきたような児童買春に関する罪で逮捕された場合でも、早急に対応することで少しでも処分を軽くするなどの対策を取れる可能性があります。家族の逮捕を知った段階では気が動転し、何をすべきか混乱してしまうことでしょう。しかし、対応のスピードによって、今後の人生が大きく変わることにもなりえます。いざというときに備え、確認しておきましょう。
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(1)自首
他の犯罪と同様に、自首をすることで減刑される可能性があります。
ただし、自首をする場合は警察などの捜査機関に発覚する前に、自発的に行う必要があります。つまり、警察に罪を犯したと特定される前に自首を行わなければ意味をなさないということになります。警察に逮捕される前に夫から相談された場合、家族の対応としては、自首を検討させ、弁護士へ相談することをおすすめします。事件化する前に弁護士に相談することによって、自首をする際も同行してサポートを行うことができます。また、事件化に至らないよう示談を行うなど、素早い弁護活動に着手することも可能となります。 -
(2)反省の証拠を提出
起訴されて刑事裁判に至るのを避けるため、または起訴されてしまってからも少しでも刑を軽くするために、反省していることを示すことも有効です。具体的な方法としては、以下のとおりです。
●反省文を提出する
事件の反省をはじめ、再犯防止のための意思や環境の改善についての対策などを文章にし、提出することで、裁判所などに反省の意思を示すものです。
●贖罪(しょくざい)寄付
被害者との示談が成立しなかった場合や、わいせつ物頒布罪などの被害者のいない刑事事件の際に、教会や慈善団体などに寄付をすることで、反省の意を示すものです。
贖罪寄付の場所や金額、反省文の内容などに関しては、弁護士に相談すると具体的なアドバイスがもらえます。 -
(3)示談
検察官が起訴して刑事裁判を開始させるか、それとも不起訴で済ませるか、また刑事裁判になった場合にどのような刑の重さになるかなどは、被害者との示談が成立しているかどうかが大きく関係します。
先ほど述べたとおり、捜査機関に罪が発覚する前に示談を成立させることができれば事件化を避けることができ、裁判まで発展しないため、加害者の社会復帰も比較的容易といえます。また、逮捕されてしまった後でも示談が成立していれば、釈放の検討をする場合や裁判時の判決に大きな影響を及ぼすことができるでしょう。
しかし、特に性犯罪の場合は、当事者同士の話し合いは成立が難しいケースが大半です。早期解決をするためには、刑事事件に対応経験が豊富で示談交渉に長けた弁護士を選任し、対応を依頼することをおすすめします。
また、被害者が未成年の場合の示談交渉は、被害者の親と行うことになります。当然ですが、自分の子どものことを金銭で解決するのをよく思わない親も多く、児童買春や強制わいせつなどの場合は、弁護士をもってしても、示談の成立が難しい場合もありえます。その場合も、弁護士へ依頼していれば、示談交渉をすること自体が無駄にはならないよう、適切な弁護活動を行うことができるでしょう。
4、まとめ
18歳以下と知らなくても罪に問われる可能性のある児童買春は、刑罰を考慮しても非常に重い犯罪であるといえます。
刑事事件は、いかにはやく解決に向けて行動していくかが重要になってきます。事件の発覚直後は気持ちの整理などがなかなかつかないかとは思いますが、早期解決のためにも、可能な限り迅速に弁護士にご相談ください。ベリーベスト法律事務所 湘南藤沢オフィスでは、経験豊富な弁護士が全力でサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています