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インサイダー取引はなぜバレる? 成立要件や具体例、発覚の理由を解説

2023年02月13日
  • 財産事件
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インサイダー取引はなぜバレる? 成立要件や具体例、発覚の理由を解説

証券取引等監視委員会が公開している「金融商品取引法における課徴金事例集」によると、令和3年中にインサイダー取引について勧告を受けた件数は6件で、課徴金額は5557万円でした。

インサイダー取引といえば「不正に情報を入手して、株取引で大きな利益を得ること」を意味していると理解している方が多いでしょう。しかし、法律の定めに照らしてみると、株取引の結果として利益を得ていない場合であっても(損失が出ていても)、インサイダー取引として処罰の対象になる可能性があります。法律の定めを正しく理解していないと、思いがけずインサイダー取引を行ってしまって刑罰・課徴の対象になってしまう恐れがあるという点に注意が必要です。

本コラムでは「インサイダー取引」とはどのような行為であるか、インサイダー取引が発覚する理由などについて、ベリーベスト法律事務所 湘南藤沢オフィスの弁護士が解説します。

1、「インサイダー取引」とは?

インサイダー取引とは、金融商品取引法166条以下の定めにおいて禁止されている不正な株式売買を指します
「インサイダー」は英語で「insider」と表記され、和訳すると「内部の人」や「社員」「会員」といった意味を持つため「内部者取引」とも呼びます。

上場会社の役員や従業員は職務を通じて、一般の投資家が知り得ない有益な情報の入手することができます。
この情報を入手できる一部の人物だけが、その情報を利用して、抜け駆け的に証券取引などを行って利益を得ようとすると、証券市場の信頼性は損なわれてしまいます。
したがって、金融商品取引法では、「上場会社の関係者などが職務や地位によって知り得た未公表の重要情報を利用して、自社株などを売買して、自己の利益を図ること」を、厳しく禁じているのです。

2、インサイダー取引の成立に関係する4要素

インサイダー取引が成立するのは、会社関係者および情報受領者が、職務上知り得た上場会社に関する重要事実が公表される前に当該会社の株式の売買などをおこなった場合です。
以下では、インサイダー取引の成立に関係する4つの要素について解説します。

  1. (1)会社関係者と情報受領者

    「会社関係者」とは、上場会社の役員・代理人・使用人・その他の従業員などです
    雇用形態は問われないため、非正規の契約社員やパート・アルバイト従業員も、すべて会社関係者に含まれます。
    また、上場会社と契約を締結している者、または締結の交渉をしている者も含まれます。
    たとえば、経営コンサルティングを担当している業者なども会社関係者となるのです。
    さらに、退職・解雇・契約終了などによって会社関係者ではなくなった場合でも、重要事実を知り得た立場にあればその後1年間は会社関係者と同様に扱われます。

    「情報受領者」とは、会社関係者を通じて重要事実を得た人を指します
    友人や知人といった他人はもちろん、家族や親戚も含まれます。

  2. (2)重要事実

    「重要事実」とは、上場会社の株価を変動させるような内容の情報を指します。
    インサイダー取引が発覚した際にニュースなどで用いられる「インサイダー情報」とは、この重要事実を指す用語です

    具体的には、次のような情報が重要事実にあたります(金融商品取引法第166条2項)。

    • 株式の発行
    • 合併
    • 業務上の提携
    • 災害に起因する損害
    • 行政処分
    • 公開買い付け(TOB)
    • 巨額の架空売上
    • 製品の検査数値改ざん
    • 巨額の協調融資
    • 業績予想や配当予想の大幅な修正
    など


    なお、上場会社の子会社の情報でも、経営に大きな影響を与える場合は重要事実として扱われます。

  3. (3)公表

    「公表」とは、重要事実が公衆に向けて公開されることを意味します。
    具体的には、下記のようなケースが「公表」にあたります。

    • 証券取引所の適時開示情報閲覧サービス(TDnet)に掲載される
    • 2つ以上の報道機関に対して公開され、12時間が経過する
    • 有価証券届出書を提出し、電子開示システム(EDINET)で公開される


  4. (4)株券等の売買等

    「株券等の売買」とは、公表前の重要事実に基づいて、利益を得る、または損失を回避する目的で株式を売買することを指します
    また、自身が株式を売買しなくても、情報受領者に利益を得させる、または損失を回避させる目的で情報伝達・取引推奨をし、結果として情報受領者が取引をすれば、インサイダー取引となるのです。

3、インサイダー取引にあたる具体例

上場会社で勤務していると、さまざまな重要事実を得る機会に遭遇します。
思いがけずインサイダー取引に巻き込まれてしまう危険があるので、情報の取り扱いには注意が必要です
以下では、インサイダー取引にあたる具体例を挙げていきます。

  1. (1)同僚に重要事実を漏らした

    たとえ同じ会社で働く同僚であっても、重要事実を知り得ない相手に対して情報を漏えいし、その相手が株式の売買を行えば、インサイダー取引となります

    ここで気をつけておきたいのが、給料や賞与から一定額を天引きして集めた資金で自社株を共同購入する「持株会」で株式を保有しているケースです。
    持株会を通じて株式を購入する場合は、会社の状況に関係なく定期的に行われる購入なので、公表前の重要事実を知っていてもインサイダー取引にはなりません。
    しかし、公表前の重要事実を知ったうえで、持株会から自己保有分の株式を引き出して売却すると、インサイダー取引として規制を受ける点に注意してください。

  2. (2)家族や親戚に重要事実を漏らした

    インサイダー取引の対象者は上場企業の会社関係者に限りません。
    会社関係者が家族や親戚などに重要事実を漏らしてしまい、その情報を得た家族や親戚などが株式売買をするとインサイダー取引に該当します

    ここで注意しておきたいのは、「実際に発生した利害はインサイダー取引の成否に影響しない」という点です。
    たとえば、インサイダー情報をもとに家族が値上がり有望な株式を購入したものの、まだ売却していないので利益が発生していない、あるいは期待が外れて損失が発生してしまった場合でも、公表前の重要事実に基づいて株式を売買していればインサイダー取引になるのです。

4、インサイダー取引がバレる理由

インサイダー取引は、個人が利益を得る、または損失を回避する目的でおこなわれるため、秘密裏に進むのが一般的です。
しかし、実際には冒頭で挙げたように令和3年中に6件、平成17年から累計すると350件が発覚して証券取引等監視委員会からの勧告を受けています
以下では、インサイダー取引が発覚してしまう経緯について解説します。

  1. (1)日本取引所自主規制法人の監視による発覚

    日本取引所自主規制法人では、東京証券取引所・大阪取引所の売買動向を常に監視・分析しています。
    重要事実が公表された銘柄については、前後の大きな取引がチェックされ、インサイダー取引が疑われるものはすべて証券取引等監視委員会へと報告されます。
    これを「売買審査」といいます。

    売買審査では、株価や売買高の動向に対して不自然と思われる取引をシステムによって抽出したうえで、取引参加者に対して注文の経緯など詳細な内容を照会すること、インサイダー取引を審査していなす。
    この監視の目から逃れるのは困難であるため、多くの場合は売買審査によってインサイダー取引が発覚することになります

  2. (2)内部告発による発覚

    売買審査の目を逃れたとしても、インサイダー取引をはたらいたことを知る同僚や知人などからの告発によって発覚する危険があります。
    証券取引等監視委員会は、インサイダー取引を含めて不正が疑われる情報を集める窓口を開設しており、電話や投書、インターネットといった方法での情報提供が可能です。
    匿名での告発も受け付けているので、インサイダー取引によって大きな利益を得たことを疎ましく感じている周囲の人物などの腹いせによって発覚する場合も想定されるのです

5、インサイダー取引の罰則

インサイダー取引を行った者や、インサイダー取引を行わせるために情報を漏らした者には、金融商品取引法第197条の2の規定に基づいて、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはこれらが併科されます。
さらに、インサイダー取引によって得た財産は、同法第198条の2の規定によって没収されるので、不正な方法で利益を得ても手元には残りません。
また、法人の代表者や従業員などが法人の業務としてインサイダー取引をした場合は、両罰規定に従って法人に5億円以下の罰金が科せられます。

これらの刑罰は、証券取引等監視委員会が検察庁に告発して刑事事件となり、刑事裁判で有罪として判決が下された場合に受けるものです。
もし、証券取引等監視委員会が告発を見送ったとしても、金融商品取引法第175条に基づく課徴金の納付命令は免れません。
課徴金の額は、インサイダー取引によって得た経済的利得に相当する金額です。
つまり、刑事事件になったかどうかに関係なく、インサイダー取引によって得た利益が手元に残ることはないのです

6、まとめ

上場会社の役員や従業員などが、職務上知り得た公表前の重要事実に基づいて株式売買などを行うと「インサイダー取引」になります
友人・知人・同僚・家族などに重要事実を漏らした場合も同様です。厳しい刑罰が科せられるだけでなく、インサイダー取引によって得た利益の相当額が没収・課徴されるため、社会的・経済的な悪影響は甚大なものになるでしょう。

実際にインサイダー取引をしたのであれば素直に課徴金納付命令に従うのが賢明ですが、通常の株式売買であったのにインサイダー取引を疑われてしまった場合は、無実であることを主張し適切に反論を行う必要があります。
インサイダー取引の容疑をかけられてしまって対応にお困りでしたら、ベリーベスト法律事務所までご相談ください
「実際にインサイダー取引にあたるのか」「厳しい刑罰を回避するためにはどのような行動を起こすべきなのか」といった点に関してアドバイスしたうえで、問題解決に向けたサポートを行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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