家族が詐欺容疑で逮捕された……量刑は? 逮捕後はどうなる?
- 財産事件
- 詐欺
- 弁護士
- 湘南藤沢
藤沢市の防犯情報によれば、令和2年の藤沢市内の特殊詐欺被害額は1億7000万円を超えたということです。藤沢市はホームページ上で市民に対し、広く注意を呼び掛けています。
もし、あなたの家族が詐欺で逮捕をされたらどのような手続きがあるのか、有罪となった場合にはどのような処罰を受けるのか、ご存じでしょうか。家族が逮捕をされてしまったら、その後の流れを知りたいと思うはずです。
今回は、ベリーベスト法律事務所 藤沢オフィスの弁護士が、詐欺で有罪判決を受けた場合の量刑や、逮捕後の流れ、示談の重要性などをわかりやすく解説します。
1、詐欺の種類とは
刑法第246条は、詐欺罪について、「人を欺いて財物を交付させた者」は処罰することを定めています。
詐欺罪の成立には、一般的に次の要件の存在が求められます。
- 欺罔(ぎもう)行為……人をあざむく行為
- 錯誤(さくご)……相手方(通常は被害者)が勘違いし、錯誤に陥ること
- 処分行為……相手方が財物や財産上の利益を加害者へ移転する行為
- 因果関係……加害者の欺罔行為によって相手方が錯誤をし、処分行為に至ったという経緯
- 故意……加害者が、相手方に欺罔行為をしていることや、欺罔行為によって処分行為をさせることの認識
ただし、詐欺罪は未遂でも罪に問われます(刑法第250条、第246条)。したがって、加害者がだまそうとした段階で相手が気づき、利益を得ることができなくても、罪に問われる可能性があります。
詐欺行為といえば、最近はオレオレ詐欺に代表されるような特殊詐欺が有名ですが、昔からさまざまな手口が横行しています。個人向けの詐欺としては、リフォーム詐欺や結婚詐欺、資格商法詐欺やオークション詐欺、特殊詐欺などがあります。融資詐欺や保険金詐欺も代表的な詐欺手口でしょう。
特殊詐欺と呼ばれる手口にもさまざまな種類があります。閲覧をしていないサイトや有料会員登録をしていないサイトの請求が届く架空請求詐欺や、融資をするから保証金を振り込むようにと求める融資保証金詐欺、架空の有価証券や外国通貨などの購入をすすめて必ず儲けられるからとお金を振り込ませる投資詐欺などなど、年々そのバリエーションは増えています。
2、詐欺罪の刑罰は? 刑務所に入ることもある?
詐欺罪で逮捕をされて有罪となった場合に受ける刑罰は、前述の刑法第246条に「懲役10年以下」と規定されています。また、刑法246条の2では、「電気計算機使用詐欺」という罪についても規定されていますが、こちらも法定刑は懲役10年以下です。また、詐欺未遂罪で有罪となった場合も、懲役10年以下の懲役に処することが規定されています。
詐欺罪には罰金刑がないため、有罪となった場合には執行猶予がつかなければ刑務所に入らなければなりません。
また、刑法の詐欺罪とは別に、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」で「組織的詐欺罪」という犯罪も規定されています。したがって、組織的詐欺罪で逮捕されて有罪になれば、「1年以上の有期刑」に処されることになります。刑法の詐欺罪よりも重い罪なので、組織性のある詐欺行為をした場合には、どちらが適用されるかも重要となるでしょう。
組織的詐欺罪は、会社や暴力団などが組織的に詐欺を行ったときに成立する犯罪です。オレオレ詐欺などの特殊詐欺が組織的に行われていた場合には、組織的詐欺罪に問われる可能性もあります。
3、詐欺で逮捕されたらその後はどうなるのか
詐欺で逮捕をされた場合、まずは最長48時間、警察に身柄を拘束され、取り調べを受けるのが一般的です。その後、検察官に事件が送致され、検察官が24時間以内に「勾留(こうりゅう)」が必要かどうかを判断します。勾留が認められると、留置所や拘置所に拘束されたまま取り調べを受けることになり、家に帰ることはできません。
勾留期間は原則として10日間ですが、必要と認められれば最長で10日間、延長されます(特殊なケースではさらに延長が認められるケースもあります)。逮捕後の勾留が長引けば、職場や学校に逮捕をされたことを隠し切れなくなり、身柄拘束前と同じ状態での社会復帰が難しくなる可能性が高まるでしょう。
検察官が勾留は不必要と判断されたり、裁判所が勾留請求を認めなければ、釈放されて在宅で捜査を受けることになります。その後、起訴、不起訴の判断がなされます。起訴されれば、裁判が開かれ、不起訴となれば晴れて無罪放免です。不起訴となれば、前科もつきません。
勾留中に起訴された場合は、保釈請求をすることができます。保釈が認められて保釈保証金を支払えば、刑事裁判中でも自宅に帰ることができます。保釈が認められなければ、刑事裁判が終わるまで身柄拘束が継続することになります。
日本では、起訴されて刑事裁判が開かれた際の有罪率は99.9%といわれています。また、多くの刑事裁判では被告人が犯罪をしたことを認めているため、詐欺罪で起訴されたときは、執行猶予付きの判決を目指す事件が多くなっています。執行猶予付きの判決となれば、判決後に刑務所に収容されることなく自宅に帰ることができるのです。
4、示談が成立すれば刑が軽くなる? 詐欺の示談とは
刑事事件では、被害者との早期の示談成立が非常に重要となります。詐欺事件における示談とは、通常は被害者からだまし取った金銭等を返還した上で、慰謝料等を支払い、「今後はこの事件について民事上の責任を問わない」と約束をすることです。同時に、被害者から「処罰を望まない」といった「宥恕(ゆうじょ)文言」をもらうことを目指します。
警察が事件を把握する前に示談が成立すれば逮捕をされない可能性がありますし、逮捕後に示談が成立していれば、不起訴処分に持ち込める場合もあります。事案にもよりますが、起訴されてしまった後でも、示談が成立し、反省をしている様子がみられれば、執行猶予付き判決であったり、比較的短期の懲役刑が言い渡される傾向にあります。なぜならば、起訴、不起訴を決定する検察官や、判決を言い渡す裁判官は、被害者の処罰感情を非常に重視するためです。
したがって、詐欺罪で逮捕をされたら、すぐに弁護士を選任し、示談のために動いてもらいましょう。本人は、警察に身柄を拘束されているため、自分で直接示談交渉ができませんし、家族も、逮捕後72時間は面会ができないのが通常ですので、本人から早期に事情を聞くことは困難です。また、被害者の連絡先がわからない場合は、警察官や検察官から、被害者の許可を得た上で連絡先を教えてもらうことになりますが、被害者は、加害者本人や加害者家族に連絡先を教えることを拒むのが一般的ですので、弁護士に依頼しなければ、そもそも示談交渉を開始することができないことが多くなります。
以上から、詐欺罪で逮捕をされたら一刻も早く弁護士に相談をして、示談交渉をスタートすることを検討してください。被害者がいる犯罪である詐欺罪においては、早期に示談を成立させておくことが、検察官、裁判官の判断において極めて重要といえるでしょう。
5、逮捕をされた家族のためにできること
あなたの家族が逮捕をされたときには、早急に弁護士に相談をして、早期の社会復帰ができるように環境を整えてあげることを検討するとよいでしょう。
逮捕後、なるべく早い段階で詐欺事件の経験豊富な弁護士に相談をしてください。また、逮捕後72時間以内には「勾留」請求をするかどうかが判断されるので、勾留請求をされないように、勾留請求をされても裁判所が認めてしまわないように弁護活動をする必要があります。
勾留を認めるかどうかは、検察官が提出した資料を元に裁判官が判断します。勾留の判断は、定まった住所があるか、逃亡する危険性はないか、証拠隠滅する可能性はあるか、などの観点と、勾留の必要性から判断されます。
その際に、弁護士が逃亡や証拠隠滅をする可能性がないことを資料の提出とともに主張すれば、勾留は認められずに帰宅できる可能性があります。勾留をされなかったからといって無罪になったわけではありませんが、勾留をされなければ、会社や学校に刑事事件のことを知られない場合もあるため、社会的信用を失わずにすむ可能性が高くなります。
同時に、示談交渉を進めて示談が成立すれば、事案にもよるものの、不起訴となる可能性も出てきます。起訴されたとしても、早期に弁護士に依頼をして示談が成立していれば、執行猶予付き判決を勝ち取れるケースも少なくありません。
詐欺罪で逮捕をされた家族がその後、早期に社会復帰をできるかどうかは、刑事事件の経験豊富な弁護士に依頼するかどうかに左右される場合もあるでしょう。
6、まとめ
詐欺罪は、罰金刑が存在せず、懲役刑しか用意されていない重大犯罪です。詐欺罪で逮捕をされて有罪になった場合には、たとえ未遂であっても10年以下の懲役に処される可能性があります。特に、組織的な詐欺を行った場合は、重い刑罰を与えられるでしょう。
したがって、詐欺罪で逮捕された場合は、迅速に弁護士に依頼をして弁護活動をスタートさせるとともに、早期に被害者との示談交渉に着手する必要があります。不起訴や執行猶予付き判決となるためには、実績豊富な弁護士による弁護活動が欠かせません。逮捕の知らせを聞いたら、すぐに弁護士への相談を検討してください。費用面で不安があるときは、ホームページなどで明確に料金の記載がある弁護士に依頼することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 藤沢オフィスには、詐欺事件に対応した経験の豊富な弁護士が親身になって最適な対策をアドバイスします。まずはご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています