職人であっても残業代は発生する! 未払い残業代を請求する方法

2024年02月26日
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職人であっても残業代は発生する! 未払い残業代を請求する方法

令和4年度に神奈川県内の総合労働相談コーナーに寄せられた労働に関する相談は7万6762件でした。

会社が労働基準法に従った管理を怠っているために、建設業で働く職人が残業代を正しく受け取れていない事例は多々あります。「長時間労働を強いられているのに、残業代の金額が少ない」と感じられている方は、実際の残業代を確認したり未払い残業代を請求したりするために、弁護士に相談することも検討してください。

本コラムでは、建設業の職人の残業代に関してよくあるトラブルや労働時間に関する特殊な取り扱い、未払い残業代請求の方法などをベリーベスト法律事務所 湘南藤沢オフィスの弁護士が解説します。

1、建設業の職人の残業代についてよくあるトラブル

建設業で働く職人の残業代は、適切に支払われていないことが多々あります。

以下では、職人の残業代に関してよく見受けられるトラブルを解説します。

  1. (1)勤怠管理が適切に行われていない

    建設現場では、会社のオフィスなどに比べると、職人の労働時間の管理がきちんと記録されていないことがよくあります。
    また、出勤しているかどうかだけを確認して、労働時間は全く記録しないという場合も少なくありません。

    こうしたケースでは、実労働時間に対応する残業代が適切に支払われていない可能性が高いといえます。

  2. (2)修行期間について残業代が支払われない

    建設業の職人には、師匠の仕事ぶりを見ながら修行する期間が設けられる場合があります。「修行なんだから、給料がもらえるだけありがたいと思え」などと言われて、残業代が一切支払われない場合もあるようです。

    しかし、修行期間であったとしても、雇用主の指揮命令下で働いている職人は「労働者」にあたるため、残業をすれば残業代が発生します
    修行期間だからという理由で残業代が支払われていない場合は、未払い残業代が発生している可能性が高いでしょう。

  3. (3)現場監督を「管理監督者」として取り扱っている

    労働者のうち、監督または管理の地位にある者(=管理監督者)には残業代が発生しません(労働基準法第41条第2号)。

    管理監督者とは、経営者と一体的な地位にある労働者を意味します。
    管理監督者に該当するかどうかは、労働者の権限・裁量・待遇などを考慮して、経営者と一体的な地位にあると評価し得るかどうかを基準に判断されます。

    建設業の現場監督は、工事現場を統括する役割を果たします。
    しかし現場監督には、部下の人事権は与えられておらず、勤務時間も明確に決められているのが一般的です。
    待遇についても、通常の労働者と大差ない場合が多いでしょう。

    これらの事情を考慮すると、現場監督は労働基準法上の「管理監督者」にあたらず、通常のルールに従って残業代を支払う必要がある場合が大半と考えられます
    しかし、肩書だけを理由に現場監督を「管理監督者」として取り扱い、残業代を支払わない建設事業者が多数いるのです。

  4. (4)移動時間を労働時間に含めていない

    建設業の職人は、資材の運搬や別現場への移動などに伴い、実働時間の間に移動時間が発生することがあります。
    移動時間であっても、使用者の指揮命令に基づいて移動がなされた場合は労働時間にあたり、賃金が発生します
    しかし、本来は賃金が発生するはずの移動時間を労働時間に含めず、現場で作業した時間に対応する賃金しか支払わない建設事業者があるようです。

    このような場合も、未払い残業代が発生している可能性が非常に高いでしょう。

2、建設業の職人には、36協定について異なるルールが適用される

建設業で働く職人については、「36協定」について通常適用されるルールの一部が変更されている点に注意が必要です。

36協定とは、時間外労働や休日労働に関するルールを定めた労使協定です。
使用者と労働組合または労働者の過半数代表者の間で締結します(労働基準法第36条第1項)。
36協定を締結しなければ、使用者は労働者に時間外労働をさせることができません。

そして、建設業の職人については、36協定に関して以下の特例が適用されるのです

<すべての建設業の職人に適用される特例(同法附則第139条第2項)>
※令和6年(2024年)3月31日まで(同日およびその翌日を含む期間を定めている36協定については、当該協定に定める期間の初日から起算して1年を経過する日まで)
  • ① 36協定では原則として、対象期間における1か月あたりの時間外労働の上限時間および休日労働の上限日数を定める必要があるところ(同条第2項第4号)、建設業の職人については、3か月以内の期間を選択して定めることができます。
  • ② 36協定で定める時間外労働の限度時間を「1か月あたり45時間・1年あたり360時間」とする規定が適用されません。
  • ③ 36協定の特別条項※に関する規定が適用されません(坑内労働の時間外労働の上限を1日あたり2時間とする規定を除く)。
※特別条項:通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い、臨時的に限度時間を超えて労働させる際のルールを定める条項


<災害復旧・復興事業に従事する建設業の職人に適用される特例(同条第1項)>
※当分の間36協定の特別条項に関して、以下の規制が適用されません。
  • 時間外労働および休日労働の合計時間数の上限を、1か月あたり100時間未満とする規定
  • 時間外労働および休日労働の合計時間数につき、2か月間、3か月間、4か月間、5か月間、6か月間の平均値を1か月あたり80時間以下とする規定
※上記の規定はいずれも現在、すべての建設業の職人に対して適用されていません。
ただし、すべての建設業の職人に適用される特例が終了すると、災害復旧・復興事業に従事する建設業の職人に適用される上記の特例のみが残ることになります。

3、建設業の職人についても、残業代の未払いは違法

前述のとおり、建設業で働く職人については、労働時間に関して特殊なルールが適用されます。

しかし、使用者の労働者の対する残業代の支払義務は、建設業で働く職人についても、一般的な労働者と同様に適用されます
そのため、所定労働時間を超える労働時間について、会社は職人に対して残業代を支払わなければいけません。
また、法定労働時間を超える労働時間については、割増賃金を支払う必要があるのです。

もし残業代が適切に支払われていない場合は、会社に対して未払い残業代を請求することができます。
残業代の支払いや金額について疑問がある場合は、正しい金額を確認したり未払い残業代を請求したりするために、法律の専門家である弁護士に相談することを検討してください。

4、未払い残業代請求を弁護士に依頼すべき理由

以下では、建設業の職人の方が未払い残業代を請求する際に弁護士に相談することのメリットを解説します。

  1. (1)正確な未払い残業代を算出できる

    弁護士は、労働基準法の規定および残業に関する証拠に基づいて、未払い残業代の金額を正確に算出することができます。

  2. (2)残業の証拠収集についてアドバイスを受けられる

    未払い残業代請求を行う際に大きなポイントとなるのが、残業に関する証拠の収集です。残業をしたことの記録が十分に残っていないと、適正額の残業代の支払いを受けられない可能性があります。
    弁護士は、労働者側が利用可能な残業の証拠について、さまざまな角度から収集をサポートすることができます

  3. (3)会社との交渉や法的手続きを一任できる

    未払い残業代請求は、まず会社との交渉を通じて行うのが一般的です。
    弁護士を通じて交渉すれば、会社に対して法的根拠のある主張を伝えられるため、労働者に有利な条件で和解できる可能性が高まります

    また、もし会社との交渉が決裂した場合は、労働審判や訴訟などの法的手続きを通じて請求することになります。
    これらの法的手続きへの対応も、弁護士に依頼することができます。労働審判員や裁判官に対して、法的根拠に基づく適切な主張を弁護士が伝えることで、労働者にとって有利な解決を実現しやすくなるでしょう。

5、まとめ

建設業の職人には、労働時間について通常とは異なるルールが適用されますが、残業代については一般的な労働者と同様に発生します。
適切な残業代を支払わらない会社も多数存在するため、「仕事に見合った残業代が支払われていない」と感じている職人の方は、未払い残業代を請求するために、弁護士に相談することを検討してください。

ベリーベスト法律事務所では、未払い残業代請求に関するご相談を承っております
建設業の職人で、残業代に関して疑問やお悩みを抱かれている方は、まずはベリーベスト法律事務所にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています