売掛金が回収できない場合の対応策とは?

2022年05月19日
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売掛金が回収できない場合の対応策とは?

取引先が増えてくると、それに比例して売掛金の回収ができない企業も出てきます。「いずれ払ってくれるだろう」と思って放置していると、資金繰りが厳しくなり、経営に支障が出てしまうおそれもあるのです。

しかし、ベンチャー企業など小規模事業者のなかには、「どのように売掛金を回収すればよいのか、よくわからない」とお悩みの方もおられるでしょう。

本コラムでは、売掛金回収を放置した場合の影響や売掛金の回収方法などについて、ベリーベスト法律事務所 湘南藤沢オフィスの弁護士が解説いたします。

1、売掛先が代金を支払ってくれない理由とは?

  1. (1)請求にミスがある

    単純に請求にミスがあって、相手が支払いをしてこないということがあります。

    この場合、先方から疑義について問い合わせがあってしかるべきですが、それをしてこない相手に対しては、こちらからすみやかに問い合わせることが重要です。
    「支払いがない」ことに気付いたら、まずは放置せずに、相手に連絡することから始めましょう

  2. (2)サービスに納得していない

    当初の話と違う場合やサービスや商品に問題があるため、支払いを留保している、という場合があります。

    このような場合には、相手が求めていた内容と提供した商品やサービスのどこが違うのか先方に確認して、解決すべき問題が存在するかどうかを確かめましょう。

  3. (3)支払いを忘れている

    ただ単に、「相手が支払いを忘れている」という事態も、意外と多いものです。

    新しい取引や単発的な取引の場合、経理担当者が支払いに慣れていないこともあって、忘れられることがあります。このような場合には、電話などで催促すれば、すぐに支払ってもらえることが多いでしょう。

  4. (4)支払い能力が低下

    取引先企業の資金繰りが厳しくなって支払い能力が低下したことが原因で、売掛金の支払いが遅れるという場合もあります。

    突発的な資金繰りの悪化で入金が遅れているのであればそれほど心配する必要はありませんが、頻繁に支払いが滞る場合には倒産する可能性もあるため、注意が必要になります。
    なお、取引先が倒産してしまうと、売掛金の回収はほとんど期待できなくなります。そのため、早めに貸倒引当金を計上するなど、会計的な処理を進めることが必要になるのです

  5. (5)相殺を考えている

    自社と取引先との関係において、相互に金銭債権がある場合、相殺により処理することができます。そのため、先方の取引先が相殺することを予定している場合には、あえて売掛金を支払わず、債権と相殺することを考えている可能性があるのです。

    この場合、売掛金の回収は難しくなりますが、自己の債務も消滅するので実害はありません。ただし、売掛金の回収によりキャッシュが得られることを期待していた場合には、それを手にすることはできなくなるため、資金繰りが厳しい場合には痛手となるでしょう。

2、売掛金が回収できないことのリスクと影響

  1. (1)時効のリスク

    売掛金は「債権」の一種です。
    民法の改正により職業別の短期消滅時効は廃止され、「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年」、または「債権者が権利を行使することができる時から10年」のうち、早いほうの期日が消滅時効として採用されることになりました。

    「権利を行使することができる時」とは、支払期限があるものについては、「支払期限が到来した日」となります。
    売掛金の場合には、期限が定められているため、期限到来日から5年経過することで時効となります。そして、時効が成立すると事実上回収は困難になりますので、経営上の影響が出る可能性があるのです

  2. (2)倒産のリスク

    取引先の資金繰りが厳しくなり、売掛金の支払いが滞る場合には、倒産のリスクが生じます。取引先が倒産してしまうと、担保を取っていない限り、債権の回収はほとんど期待できなくなってしまいます。

    また、取引先が倒産することで、連鎖倒産を危惧した他の取引先から、売掛金の早期支払いを求められる場合もあるのです

  3. (3)支払い順位を下げられるリスク

    支払い時期を遅れても督促をしないと、「債権回収にあまり積極的でない企業だ」「期限を遅れて支払っても大丈夫だ」となめられてしまうことがあります。

    すると、支払い順位を下げられて、他の会社よりも後回しにされてしまうリスクがあるのです。

3、売掛金を回収する流れ

売掛金が支払われない理由が「こちら側の請求ミス」や「相手がサービスの提供内容に納得していない」などである可能性もあります。
このような場合には、はじめから強行に請求するというのは得策ではありません。
まずは相手に問い合わせて、こちらに問題があることなのか、それとも先方に問題があることなのかを確認しましょう

どちらに責任があるかによって対応方法も変わってきますが、基本的には、次のようなステップで請求していくことになります。

  1. (1)電話で未払いであることを連絡する

    期限までに支払いがない場合、まずはじめは電話して、「振り込まれていないこと」を連絡しましょう。担当者の失念によるものであれば、すぐに支払ってもらえるはずです。

    また、請求ミスや商品やサービスに問題がある場合には、その内容についてクレームがなされるはずです。
    先方の主張が正しいのであれば、請求書の訂正や商品やサービスでの不具合の解消に努めなければなりません。
    先方の支払い能力の低下により支払いが滞っている場合には、「もう少し待ってほしい」などの要請がなされるでしょう。その場合には、取りあえず新たな期限を定めて、その期限まで待つことになります。

  2. (2)文書で未払いであることを連絡する

    再度の期限を定めたにも関わらず支払いがなされないという場合には、文書での請求をすることになります。
    はじめは通常の文書でも構いませんが、それでも支払わないような場合には、請求した事実を明らかにするためにも、内容証明郵便で送付することが一般的です。
    その際には、弁護士などに依頼して、弁護士名義で内容証明郵便の催告書を送付すると相手にプレッシャーを与えられて、効果的です。また、文書で催告する場合には、必ず期限を定めましょう。

  3. (3)法的手続き

    催告や任意の交渉によっても支払ってこないという場合、法的手続きをとるしかありません。法的手続きの種類としては、下記のようなものがあります。

    • 支払督促手続
    • 少額訴訟
    • 民事調停
    • 通常訴訟


    いずれの手続きについても専門的な知識が求められるので、法的手続きを実施する際には、弁護士に依頼するようにしましょう

    「支払督促手続」は、裁判所から債務者に対して金銭の支払いを命じる支払い督促を発するという手続きです。支払督促を受け取ってから2週間以内に異議の申し立てをしなければ仮執行宣言を付すことができ、強制執行の申し立てをすることができるようになります。

    「少額訴訟」は、60万円以下の金銭を請求する場合に、簡易裁判所において1回の期日で審理を終えて判決することを原則とする裁判手続きです。

    「民事調停」は、相手が誠実に話し合いには応じるが支払いをしてもらえないという場合に裁判所で調停という形で調整してもらえる手続きです。

    これらの手続きでも回収が難しい場合、通常訴訟ということになります。ただ、通常訴訟となると、時間も費用もかかってしまいます。債権額が少ないような場合には赤字になってしまうこともあるため、実施する際には注意が必要です。

4、売掛金が未回収にならないためにできること

  1. (1)与信管理の徹底

    売買は売り上げにつながるものなので、「与信」という意識を持たない方も多いかもしれません。しかし、即時に入金が得られない売り上げは、融資などと同様、取引先の与信管理が重要になります。

    資本金の額、取引先、売り上げの推移など、特に初めて取引をする場合には念入りに調査する必要があります。その上で、最近の業績がどうなのかなど、取引先の情報を収集しながらフォローしていくことが重要になるのです。

  2. (2)早期の回収

    売掛金の回収はスピードが大事です。最悪の場合、消滅時効によって回収ができなくなります。期限が来ても売掛金が支払われなかった場合、すみやかに連絡して支払ってもらうことが何より重要です。

    支払う企業側からすると、支払いの督促が迅速で厳しいところと、支払いの督促をあまりしてこないところを比較した場合、「督促のプレッシャーから早く逃れたい」という思惑から、前者を優先的に支払うものです。
    債権回収には「早い者勝ち」という側面があります。他の事業者に債権を回収される前に、いち早く対応を開始しましょう。

  3. (3)弁護士の活用

    相手が不誠実な対応をとっており、通常の手段では回収が難しい場合には、弁護士より電話してもらうなどの方法でけん制をかけることも、有効な手段になります。

    また、売掛金の回収が遅れている場合には、「どのようにして回収していくか」について早い時点から弁護士に相談することで、有効な対策を立てることができるでしょう。

5、まとめ

本コラムでは、売掛金が回収できない場合の対策について解説いたしました。
売掛金の回収で大事なことは、「期限が来ても未払いの場合には、すぐに督促する」ということです。

長年回収ができないと、時効になってしまうというおそれもあります。自力で回収が難しい場合には、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士が間に入ることで相手の対応も変わることも多くなり、回収が困難な相手に対しても有効な対策を練ることができます。

ベリーベスト法律事務所では、債権回収についての豊富な経験とノウハウを有しており、弁護士と債権回収専門チームが連携して迅速に、債権を回収いたします。
神奈川県藤沢市周辺にお住まいで、売掛金の回収について相談したいという場合には、ベリーベスト法律事務所 湘南藤沢オフィスまで、お気軽にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています