【後編】専業主婦でも親権は獲得できる? 親権を得るために必要な条件とは

2020年11月24日
  • 親権
  • 専業主婦でも親権
  • 湘南藤沢
  • 後編
【後編】専業主婦でも親権は獲得できる? 親権を得るために必要な条件とは

子どもがいる夫婦が離婚する場合、親権は大きな問題になりがちです。特に専業主婦であれば、自分自身に収入がなくなるだけに親権をとれるのかどうか、大変気になることでしょう。

そこで前編では、親権の定義や法的な扱いについて解説しました。後半は、引き続き藤沢オフィスの弁護士が、専業主婦が親権を獲得できるのかどうかについて解説します。

2、専業主婦でも親権は獲得できるのか?

結論から言いますと、「十分可能」です。

その理由を、以下でご説明します。

  1. (1)母性優先の原則

    子どもが健全に育つためには、いわゆる「母性愛」を子どもに対して与えることができる存在が不可欠と考えられています。ただしここでいう「母性」とは、単純に生物学的な意味での「母親」ということではなく、の違いではありません。何よりも子どもを大切にして、子どもとの間に心理的に緊密な関係を持っているかという観点であることに注意してください。

    必ずしも機械的に決まるものではありませんが、一般的には、子どもが幼ければ幼いほど、裁判所は母親が親権者としてふさわしいという判断を出す傾向にあるとはいえるでしょう。

  2. (2)過去の養育実績

    父母のどちらかを親権者とするか判断するうえでは、これまでの養育実績の優劣が考慮されます。そして養育実績の優劣は、父母のどちらが子どもと長く過ごして適切に養育していたかということが大きな判断基準になります。

    母親が専業主婦である場合、父親は外で働いていることが多いものです。結果として、これまで子どもと長い時間を過ごしてきたのは父親ではなく母親でしょう。あまりにも当たり前ですが、この事実も裁判所が親権者を決定するポイントとして大きな影響を及ぼすのです。

  3. (3)経済的事情は重視されにくい

    専業主婦だから収入がない、これからパートに出たとしても収入は知れている、だからといって高収入を得る仕事に就くことができるキャリアはない、そもそもフルタイムで働いたら子どもの世話をする時間がない……。このような事情は、子どもの親権をあきらめる理由にはなりません。

    そのために民法第766条1項では「子の監護に要する費用の分担」として、いわゆる養育費を定めています。養育費とは、離婚したあと子どもを監護していない親が負担する、子どもが大人として自立できるようになるまで必要なお金のことです。

    もし、上記(1)と(2)が認められ、かつ父親が離婚前と同様に収入を得ていれば、母親自身の収入が少なかったとしても父親からの養育費でカバーできると考えられます。したがって、専業主婦だった母親にとって今後の子どもの養育に関するマイナス要素にはなりにくいのです。

    また、近年はシングルマザーに対する支援制度も充実しています。仮に父親の収入がなかったとしても、上記(1)と(2)が認められ、離婚後の子どもの養育に十分な収入が得られると判断されれば、専業主婦であることが親権者を決定するうえで決定的なマイナスポイントになることは考えにくいでしょう。

    もちろん、これまで専業主婦だったとしても、離婚後の子どもをより良い経済状態の中で養育するために、子どもと過ごす時間も確保したうえであなた自身が働きに出るという積極的な姿勢は、あなたにとってプラスのポイントになると考えられます。

3、母親に親権が認められない可能性が高いケースは?

親権をめぐる過去の裁判で親権を勝ち得ているのは、ほとんど母親です。しかし、以下のようなケースにおいては、親権について父親に有利な判断が出る可能性があります。

  1. (1)子どもが父親と同居しているケース

    裁判所が親権者を決める判断基準のひとつとして、「監護の継続性の原則」というものがあります。これは、子どもの生活環境はむやみに変えるべきではなく、子どもが現状に問題なく生活しているのであれば、その現状を継続すべきという考え方です。

    もしあなたがすでに夫と別居しており、子どもが夫と同居かつ問題なく生活している場合は、親権者として夫が有利になる可能性があります。

  2. (2)子どもが父親を選んだケース

    先述のとおり、離婚後の親権者を決定する際に子どもが自分で意思決定できない年齢であれば、母親が有利になる傾向があります。

    しかし一般的に、家庭裁判所は、子の意思を把握するように努め、審判や調停をするにあたって、子の年齢および発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならないとされ(家事事件手続法65条、258条1項)、親権者の決定について子どもの意思も考慮すべきという考え方があります。特に15歳以上の子どもであれば、家庭裁判所は子どもの意見陳述を聴かなければならないとされています(家事事件手続法169条2項、人事訴訟法32条4項)。

    その段階で、もし子どもが父親に付いていくという意思表示をした場合は、父親が親権者となる可能性が高くなります。

  3. (3)親権者としての母親が、子どもの幸福にふさわしくないケース

    繰り返しになりますが、裁判所が親権者を決定するうえでもっとも重視するポイントは、「子どもに幸福にとって、父母のうちどちらが親権者としてふさわしいのか」ということです。

    このため、たとえ母親であっても以下にあてはまる場合は、親権者としてふさわしくないと判断される可能性があります。

    • 薬物依存や盗癖、さらには子どもへの虐待など、明らかな犯罪傾向が認められる場合
    • 子どもの養育よりも、異性関係やギャンブルなど自己のために時間とお金の浪費を優先させている場合
    • 食事や衛生面など、子どもの生活環境が劣悪な場合
    • 心身ともに健全とは認められない場合
    • 父親と比べ、他の親族からの支援が見込めない場合
    • 別居後の相手方から、子どもを略奪した場合
    • 離婚後の面会交流に不寛容である場合

4、親権や養育費などのお悩みは、弁護士に相談すべき理由

親権を取りたくてもどうすればいいかわからないという方は少なくありません。特に、自分が離婚原因を作ってしまったというケースであればなおさらでしょう。お互いに感情的になり親権や養育費の話し合いができない、調停や裁判への移行も視野に入れなければならない、そもそも法律や制度のことがわからないなどで悩んでいるのであれば、できるだけ早いうちに弁護士に相談することをおすすめします。

離婚問題に対応した実績が豊富な弁護士は、親権を獲得できる可能性を法的・客観的な側面から判断できます。その上で協議や調停における夫との話し合いを少しでも有利に進める方法についてアドバイスを行います。

また、弁護士はあなたの代理人として夫と交渉し、円満な離婚に向けた働きが期待できます。特に夫が弁護士を立ててきた場合は、これ以上あなた自身で解決を試みることはせず弁護士に依頼しましょう。

5、まとめ

専業主婦であるという事情は、親権獲得には関係がないケースがほとんどです。それでも、親権獲得を目指す場合、もし家庭裁判所の判断を仰ぐことになったときでも、家庭裁判所が親権者を判断するポイントを知っておいたほうがよいでしょう。そのためにも、事前に弁護士のような専門家から客観的・法的なアドバイスを得ておくことは非常に有益なのです。また、弁護士はあなたの代理人としての役割を依頼することもできます。

まずはベリーベスト法律事務所 藤沢オフィスの弁護士へお気軽にご相談ください。離婚問題に対応した経験が豊富な弁護士が、あなたとあなたの子どもにとって最善の未来を得られるよう、力を尽くします。

>前編はこちら

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています