【前編】専業主婦でも親権は獲得できる? 親権を得るために必要な条件とは
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- 専業主婦でも親権
- 湘南藤沢
財産分与、慰謝料、離婚後の生活……。離婚を決断する際は配偶者と話し合って決めなければならない条件や、さまざまな悩みが出てきます。未成年の子どもがいる場合、もっとも重要で相手方に譲れない条件のひとつが、親権を獲得して、離婚後も子どもと生活できるようにすることでしょう。しかし、専業主婦であれば夫と比べて経済力がないことから、子どもの親権をめぐって夫と争うことになった場合に不利になってしまうのではないかと思われている方が多いようです。
そこで、法律や現状の慣行などを踏まえ、専業主婦であっても親権を獲得できるポイントについて、ベリーベスト法律事務所 藤沢オフィスの弁護士が解説します。
1、そもそも親権とは
まずは民法上の親権について、基本的な事項を押さえておきましょう。
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(1)親権は親の権利と義務
親権とは、未成年の子どもを監護・養育するために、親に認められた子どもに対する権利および課せられた義務の総称です。親権は、主として「身上監護権」と「財産管理権」の2つから構成されています。
身上監護権とは、子どもの住居を決める権利(居所指定権)、しつけのために子どもを叱る権利(懲戒権)、子どもが職業に就くことを許可する権利(職業許可権)、子どもの身分など一定の行為についての代理権(子の代理権)に細分されます。このうち、懲戒権については近年増加している児童への虐待事件を受け、民法からの削除を含めた見直しが検討されています。
財産管理権とは子どもの財産を管理し、必要に応じ財産に関する子どもの法律行為を代理または同意を与える権利のことです。
また、これら2点以外にも、一定の身分上の行為についての代理権などが法律上定められています。 -
(2)離婚後の親権は父母の一方のみ
父母が婚姻している場合は、民法第818条第3項で、親権は父母が共同して行使するという「共同親権の原則」を定めています。これに対して父母が離婚した場合は、民法第819条で、父母のどちらか一方しか子どもの親権者になることができないものと定めています。協議による離婚か裁判による離婚かを問わず、離婚する場合は子どもの親権者を確定させる必要があり、どちらが親権者になるのか決まっていないと離婚届も受理されません。
ちなみに日本では先進国で広まっている離婚後の共同親権が認められていません。この点で、子どもの福祉の観点から共同親権の導入を求める声が高まりつつあります。 -
(3)例外的に、親権者でなくても監護者になることがある
原則として、離婚後は親権者となった父母のいずれかが身上監護権と財産管理権を併せ持つことになりますが、例外的に親権者と監護権者が別になる場合があります。この場合、子の監護を行わない親権者には財産管理権などが認められます
また、離婚後に、父母の話し合いだけで親権者を変更することはできませんが(後述)、親権者を変えないまま監護者だけを話し合いで変更することは可能だと考えられています。 -
(4)親権者は変更できる?
民法は、生活環境の変化に対する子どもへの影響を考慮し、離婚時に取り決めた親権について簡単に変更すべきではないという考え方をしています。そのため、離婚後の親権者を父母の話し合いだけで変更することは認められていません。
民法第819条6項では、家庭裁判所は子の親族の請求により「子の利益のため必要があると認めるとき」に親権者を変更できるとされています。たとえば、親権者が死亡した場合、親権者による虐待や育児放棄などにより子どもの生活環境が著しく悪化していると判断される場合などに、親権者の変更が認められることがあります。
具体的な手順をご説明しましょう。
まず、家庭裁判所に「親権者変更調停」を申し立てます。そして、必要に応じて家庭裁判所調査官による調査を交えながら、親権者の変更についての調停で話し合いを行います。話し合いで変更について合意できればそこで解決しますが、話し合いがまとまらず調停不成立となった場合は家庭裁判所による審判が行われ、これにより認められた場合に親権者が変更されます。 -
(5)親権はいつまで?
親権は「未成年の子ども」に対する権利義務ですから、子どもが20歳になったとき、あるいは20歳未満であっても結婚した場合は民法上成年したとみさなれるため、親権は消滅します。
後編では専業主婦が親権を獲得できるのかどうかについて解説します。
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