借金を滞納して裁判所から通知が届いた|放置するリスクと対応方法
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裁判所が公表している司法統計によると、令和3年に横浜地方裁判所管内の簡易裁判所に申し立てのあった支払督促は、1万833件でした。
借金を滞納したまま放置していると、裁判所から支払督促や訴状が届くことがあります。このことは、債権者が法的手段に出たということを意味します。したがって、きちんと対応しなければ、財産の差し押さえを受けるなどのリスクが生じます。
早めに弁護士に相談をして、対応を考えるとともに、借金の返済が困難であれば債務整理も検討していきましょう。本コラムでは、借金を滞納して裁判所から通知が届いた場合の対応方法や放置することのリスクについて、ベリーベスト法律事務所 湘南藤沢オフィスの弁護士が解説します。
1、裁判所からの通知は2種類
借金を滞納した場合に裁判所から届く通知には、支払督促に関するものと訴訟に関するものとの2種類が存在します。
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(1)支払督促
「支払督促」とは、債権者からの申し立てに基づいて、簡易裁判所の書記官が債務者に対して、金銭などの支払いを命じる手続きです。
債権者から支払督促の申し立てがあった場合には、簡易裁判所から債務者の自宅に、以下のような通知が送られてきます。- 支払督促申立書
- 支払督促異議申立書の書式
支払督促は、通常の裁判とは異なり、裁判所の法廷での審理は行われず、簡単な書類審査のみで支払いが命じられます。
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(2)訴状
債権者が裁判所に対して貸金返還請求訴訟を提起した場合には、裁判所から以下のような通知が送られてきます。
- 訴状
- 口頭弁論期日呼出状
- 答弁書の書式
債権者から訴えを提起された場合には、支払督促とは異なり、裁判所での審理が行われますので、債務者は、裁判の被告として裁判所に出頭しなければなりません。
請求額が140万円を超える場合には地方裁判所が管轄し、140万円以下の場合には簡易裁判所が管轄します。また、60万円以下の金銭の支払いを求める場合には、簡易裁判所の少額訴訟が利用されることもあります。
裁判所から通知が届いた場合には、届いた通知が「支払督促申立書」と「訴状」のどちらであるかによって、取るべき対応が異なってきます。
2、支払督促や訴状を放置した場合のリスク
裁判所からの支払督促や訴状を放置することには、以下のようなリスクが生じます。
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(1)債権者の言い分どおりの請求が認められる
裁判所からの支払督促や訴状を無視して放置していた場合には、債権者の言い分どおりの請求が認められてしまいます。
債権者の請求が認められると、基本的には一括での支払いとなり、分割払いは認められません。
また、長期間滞納していた借金については、消滅時効を援用することによって、支払いを免れることができる可能性があります。
しかし、支払督促や訴状を無視していると、そのような権利を主張する機会を逃してしまうことになり、本来なら支払わなくてもよかったお金を支払う羽目になるおそれがあるのです。 -
(2)債権者と和解をする機会を失う
債権者からお金を借りたことは間違いないという場合にも、支払督促や訴状を無視してはいけません。
支払督促や裁判手続きでは、支払い方法に関して話し合いを行う機会が設けられることがあります。分割であれば借金の返済が可能であるという場合には、裁判所に出頭してその旨を伝えることによって、分割払いでの返済が認められる可能性もあります。
しかし、支払督促や訴状を無視していると債権者と和解をする機会を失うことになり、一括での支払いしか認めてもらえなくなるのです。 -
(3)財産が差し押さえられる
支払督促を無視していると、最終的に仮執行宣言付き支払督促が発令されます。
また、訴状を無視していると、最終的には判決が言い渡されます。
このような仮執行宣言付き支払督促や判決は、強制執行の申し立てに必要となる債務名義にあたりますので、債務者からの支払いがない場合には、債権者から強制執行の申し立てが行われます。
債務者に差し押さえるべき財産(預貯金、給料、不動産など)がある場合には、債権者による差し押さえが行われ、強制的に回収が行われてしまいます。
給料が差し押さえられれば、職場に借金のことが知られてしまいます。また、預貯金が差し押さえられれば生活費の捻出が困難になるおそれがあるでしょう。
3、裁判所から通知が届いた場合の対応方法
裁判所から通知が届いた場合には、以下のような対応が必要になります。
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(1)異議申し立て
支払督促の手続きには、裁判所での審理はありませんので、支払督促を受け取ってから2週間が経過すると、書面の内容に同意したものとみなされてしまいます。
そのような事態を回避するために、裁判所から支払督促申立書が届いた後、2週間以内に督促異議申立書を裁判所に提出しましょう。
支払督促に対する異議の申し立てをすると、支払督促の手続きは通常の訴訟手続きに移行します。
分割払いでの和解を希望する場合には、通常の訴訟手続きに移行後、裁判期日に出頭して、その旨を主張してください。 -
(2)答弁書の提出
裁判所から訴状が届いた場合には、指定された期限までに答弁書を提出しましょう。
答弁書とは、訴状に記載された原告の請求や主張に対する、被告の反論を記載した書面です。分割払いでの和解を希望する場合には、答弁書にその旨を記載して、裁判所に提出しましょう。 -
(3)弁護士に相談をして債務整理を行う
裁判所からの通知にしっかりと対応することによって、分割払いでの返済が認められる可能性があります。
しかし、債務者のなかにはそもそも分割払いであっても返済が難しいという方もおられます。
そのような場合には、早期に弁護士に相談しながら、債務整理の手続きを行うことをおすすめします。
債務整理とは借金の返済負担を軽減するための手続きであり、以下の3種類の方法があります。
① 任意整理
任意整理とは、債権者との交渉を行い、以下の条件について和解することによって、借金返済の負担軽減を図る方法です。- 将来利息のカット
- 支払い方法の変更
- 支払期限の猶予
任意整理は裁判所を通さない手続きであるため、一部の債権者を除いて債務整理をするということも可能です。
そのため、保証人がいる場合には、保証人付きの債権を除外することで、保証人に迷惑をかける事態を回避することもできます。
ただし、任意整理には自己破産や個人再生ほどの借金減免の効果はありませんので、借金の総額が多大である場合には不適切な方法となります。
② 自己破産
自己破産とは、裁判所から免責許可決定を受けることで、借金の返済義務を免除してもらうことができる手続きです。
借金をゼロにするという大きな効果が得られる反面、一定金額以上の資産がある場合にはすべて手放さなければならない、というデメリットもあります。
③ 個人再生
個人再生とは、裁判所から再生計画の認可を受けることで、借金総額を大幅に減額することができる手続きです。
債務者は、減額後の借金を原則3年(最長5年)で返済していくことになります。
個人再生では、自己破産のように資産を手放す必要がなく、住宅ローン付きの自宅があっても住宅資金特別条項を利用すれば自宅を手放すことなく債務整理を行うこともできます。ただし、返済を前提とする債務整理であるため、安定した収入のある債務者でなければ利用することができません。
4、借金問題は弁護士に相談を
借金問題でお困りの方は、まずは弁護士に相談してください。
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(1)裁判所からの通知に適切に対応できる
裁判所から通知が届いても、よくわからず無視してしまう方も少なくありません。
しかし、裁判所からの通知を無視しているとさまざまなリスクが生じることになり、最悪のケースでは財産を差し押さえられてしまう可能性もあります。
裁判所からの通知に対応するには、法的知識が不可欠です。
対応するにあたっては期限がありますので、通知が届いた場合には、できだけ早く弁護士に相談しましょう。 -
(2)弁護士なら金額にかかわらず対応可能
借金問題に対応できる専門家としては、弁護士以外にも司法書士がいます。
しかし、司法書士は、以下のように対応できる分野が限られています。- 個別の債権額が140万円以下
- 自己破産や個人再生の申し立てはできるが代理人になることはできない
債権者から訴訟を提起されたとしても、債権額が140万円を超えていると司法書士では対応できません。
また、債務整理をする際にも1社につき140万円を超えている場合には対応できません。借金問題について幅広く対応するために、司法書士事務所ではなく弁護士事務所や法律事務所にご相談ください。 -
(3)最適な債務整理の方法を提案できる
債務整理の方法には、任意整理、自己破産、個人再生があり、それぞれ異なるメリットとデメリットが存在しています。
借金の負担を効果的に減らすためには、最適な債務整理の方法を選択することが重要です。
弁護士であれば、法律の専門知識や実務経験に基づき、最適な方法をアドバイスすることができます。
5、まとめ
借金の滞納をしている状況で裁判所から通知が届いたら、絶対に無視してはいけません。
返済ができないとしても放置するのではなく、早いうちから弁護士に相談したうえで、適切な対応を行ったり債務整理を検討したりすることが大切です。
借金問題でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています