奨学金の返済を自己破産で解決することは可能? 保証人はどうなる?
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日本学生支援機構が公表している「令和2年度学生生活調査結果」によると、大学生のうち49.6%の人が日本学生支援機構などの何らかの奨学金を受給しているとのことです。
奨学金の多くは貸与型の奨学金であるため、大学などを卒業した後は、借りていた奨学金を返済していかなければなりません。しかし、怪我や病気などによって働けなくなってしまった場合には、奨学金を返済することが難しい状況になることもあります。このような場合に、自己破産によって奨学金の返済義務を免れることはできるのでしょうか?
本コラムでは、奨学金の返済を自己破産で解決することができるかどうか、また自己破産した場合に生じる影響について、ベリーベスト法律事務所 湘南藤沢オフィスの弁護士が解説します。
1、奨学金は自己破産が可能なのか?
まず、自己破産によって奨学金の返済義務を免れることができるのかどうかについて、解説します。
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(1)奨学金も自己破産が可能
自己破産とは、裁判所に申し立てをして免責決定を受けることによって、借金の返済義務を法律上免除してもらうことができる手続きです。
奨学金も借金であることには変わらないため、以下に記すような自己破産の条件を満たしていれば、奨学金を対象にして自己破産をすることができます。① 支払不能状態であること
自己破産をするためには、借金を返済することができない状態(支払不能状態)であることが必要となります。
一時的な失業によって返済ができない場合や、収入はなくても資産があるという場合には、支払不能状態とはいえないとして自己破産をすることができない可能性があります。
② 借金が非免責債権ではないこと
非免責債権とは、自己破産手続きによっても返済義務を免れることができない債権のことをいいます。
たとえば、税金、社会保険料、養育費などは非免責債権にあたりますので、自己破産をしても免責を受けることはできません。
他方、奨学金は、法律上、非免責債権にはあたりませんので、自己破産によって免責を受けることが可能です。
③ 免責不許可事由に該当しないこと
破産法では、破産者に一定の事情がある場合には、免責を認めない扱いをしています。
このような事情のことを「免責不許可事由」といいます。
たとえば、浪費やギャンブルを原因で多額の借金をしたような場合には、免責不許可事由に該当しますので、原則として免責を受けることはできません(ただし、裁量免責の可能性があります)。
奨学金は、学費や生活費を目的として借りたお金ですので、基本的には免責不許可事由には該当しません。 -
(2)自己破産のメリットとは?
自己破産の申し立てをして免責決定が確定すると、それ以降は借金を支払う必要がなくなります。
奨学金以外にも複数の業者から借り入れがあり、多額の借金があるというケースでも、原則としてすべての借金の支払い義務が免除されますので、借金問題を根元から解決することが可能です。
自己破産以外の債務整理の方法である任意整理や個人再生では、借金をゼロにするまでの効果はありませんので、すべての借金の支払い責任がなくなるという点が自己破産の最大のメリットといえるでしょう。
2、奨学金の返済を自己破産した場合の影響は?
自己破産をすることによって奨学金の返済を免れることができますが、その反面、以下のような影響が生じる可能性があります。
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(1)連帯保証人への影響
奨学金の申し込みをする際には、機関保証ではなく連帯保証人や保証人といった人的保証を利用することがあります。
自己破産をすることによって、破産者本人については奨学金の返済を免れることができますが、連帯保証人や保証人の返済義務は消滅しません。
したがって、本人の破産後は、連帯保証人や保証人が本人に代わって奨学金を返済していく必要が生じるのです。
やむを得ず自己破産をすることになった場合には、連帯保証人や保証人に対して、きちんと破産申し立ての前に事情を伝えておくことが大切です。 -
(2)クレジットカードの利用ができなくなる
自己破産をするとその情報は、信用情報機関に事故情報として登録されてしまいます。
いわゆる「ブラックリスト」と呼ばれるものであり、事故情報が登録されてしまうと、一定期間、クレジットカードを利用することができなくなったり、新規の借金が申し込めなくなったりするなどの影響が生じます。 -
(3)一定以上の財産を手放す必要がある
自己破産をすることによって、借金をゼロにすることができますが、一定金額以上の財産については、すべて手放した上で、債権者への返済に回さなければなりません。
そのため、家や車などを所有している場合には、原則として売却しなければなりません。 -
(4)職業に制限が生じる可能性がある
自己破産手続中または自己破産手続き後は、一定の職業について制限が生じることがあります。
たとえば、警備員、生命保険外交員、宅地建物取引士などの職業に就いている場合には、自己破産手続きが終了するまでの間は、仕事を行うことができなくなってしまいます。
これらの職業に就いている方は、自己破産以外の債務整理も検討する必要があるでしょう。
3、自己破産する前に確認しておきたい救済制度
奨学金の返済が困難になった場合には、自己破産以外にも以下のような制度を利用することによって、問題を解決することができる可能性があります。
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(1)減額返済制度
怪我や病気などの理由で奨学金の返済が困難な状況になった場合には、減額返済制度を利用すれば、毎月の返済額を減額して返済を続けることができます。
減額できる金額は、当初の返済月額の2分の1または3分の1の金額であり、最長で15年(180か月)間、減額返済を行うことができます。
ただし、減額返済制度は、毎月の返済額を減らして返還期間を延長する制度であるため、返済総額そのものが減額されるわけではありません。 -
(2)返還期限猶予制度
怪我や病気などの理由で奨学金の返済が困難な状況になった場合には、返還期限猶予制度を利用すれば、一定期間、奨学金の返還を猶予してもらうことができます。
返還期限を猶予してもらうことができる期間は、最大で10年までとされています。
ただし、返還期限猶予制度は、元金や利子が免除されるものではありません。 -
(3)返還免除制度
本人が死亡した場合または精神・身体の障害によって返還が困難になった場合には、返還免除制度を利用すれば、奨学金の全部または一部の返還を免除してもらうことができます。
4、奨学金以外の借金でもお悩みの場合
奨学金以外の借金も抱えている場合には、以下のような方法を検討しましょう
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(1)自己破産以外にも債務整理の方法がある
債務整理の方法には、自己破産以外にも任意整理や個人再生といった方法があります。
任意整理とは、債権者との交渉によって将来利息のカットや支払い方法の変更に応じてもらう方法です。
自己破産のように借金をゼロにするまでの効果はありませんが、免責不許可事由がある場合や保証人に迷惑をかけたくないといった事情がある場合には、任意整理を選択することにもメリットがあります。
個人再生とは、裁判所に申し立てをして、再生計画の認可を受けることによって、借金総額を大幅に減額し、減額後の借金を分割で支払っていく方法です。
住宅資金特別条項を利用することによって、自宅を手放すことなく、住宅ローン以外の借金を減額することができるため、自宅を手放したくないという方には個人再生も有力な選択肢になるでしょう。 -
(2)適切な債務整理の方法は弁護士がご提案・サポート可能
債務整理には、さまざまな方法があるため、借金の状況、借金の総額、資産状況などをふまえて適切な債務整理の方法を選択することが大切です。
弁護士であれば、ご本人の状況に応じた、最適な債務整理の方法をご提案することが可能です。
借金問題でお困りの方は、まずは弁護士にご相談ください。
弁護士に依頼をすれば、すべての手続きは弁護士が代わりに行うことができます。
債権者と交渉したり、裁判所に申し立てたりするといった負担もありません。
弁護士による受任通知が債権者に届いた後は、債権者からの取り立てが一時的にストップしますので、精神的な負担も軽減できるでしょう。
5、まとめ
奨学金は多くの方に利用されていますが、大学卒業時点で数百万円もの借金を背負うことになりますので、経済的な負担は非常に大きいものです。
奨学金の返還が困難になった場合には、減額や猶予といった制度を利用することができますが、そのような制度を利用しても解決が難しいという場合には、債務整理を検討する必要があります。
奨学金やその他の借金などでお困りの方は、弁護士による債務整理によって問題を解決することができる可能性があります。
ひとりで悩むのではなく、まずは、ベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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