黙秘により勝ち取った嫌疑不十分での不起訴

  • cases806
  • 2023年10月16日更新
男性
  • 男性
  • ■犯罪行為 強制わいせつ罪
  • ■罪名 強制わいせつ罪
  • ■解決結果 不起訴(嫌疑不十分)

事件発生の経緯

被疑者は、通りすがりの未成年の女子(以下「被害者」といいます。)に声をかけ、ホテルに連れ込んだものの、わいせつな行為は一切行わず、被害者と話をしたのみで被害者をホテル外へ送りました。それにもかかわらず、被害者は、「被疑者からわいせつな行為をされた。」と警察に訴えたことで、ホテル内にとどまっていた被疑者に対する事情聴取が開始されました。

ご相談~解決の流れ

私が被疑者から電話を受けたのは、警察官が上記事情聴取を終えて、ホテルを一度去ってからすぐのことでした。被疑者の話を聞くと、「わいせつな行為をされた。」という被害者の主張とは全く真逆の主張、すなわち、「わいせつ行為は一切していない。」という主張でしたので、今後、取調べを受ける際には黙秘するように指示しました。
今回の事件で想定される証拠としては、道路上の防犯カメラ映像、ホテル内の防犯カメラ映像、被害者の衣服に付着したDNA、被疑者の供述、被害者の供述、目撃者の供述等が考えられました。もっとも、被疑者の主張からすれば、被害者にはわいせつ行為をしていないということでしたので、有力な証拠としては、被疑者の供述と被害者の供述くらいであろうと想像しました。
刑事裁判が開かれるためには、ほぼ100%有罪であると判断するに足りる証拠が必要になります。今回でいえば、被害者の供述のみでは足りず、その他の証拠が必要になります。もっとも、被疑者の主張からすれば、わいせつ行為は一切していないので、被疑者の供述以外に被害者の供述を支える証拠がないと判断しました。
そのため、私は、被疑者に対して、1時間以上かけて黙秘する必要性を詳細に説明するとともに、ホテルの部屋から出ないように指示しました。ホテルの部屋から一歩でも出れば、外で待機していた警察官に取り囲まれて、黙秘の必要性を説明することができないおそれがあったためです。私の経験として、職務質問中の被疑者から電話がかかってきたことがありますが、警察官が「電話するな。」と大声で説明する声が電話口から聞こえてきたこともあり、そのような中で黙秘の必要性を詳細に説明することはおよそ不可能であるという印象を持っていました。
その後、被疑者は、逮捕令状を持ってホテルに再度やってきた警察官たちに逮捕されてしまいましたが、私はすぐに面会に向かい、黙秘を再度指示しました。その結果、検察官からの長期の身体拘束を求める勾留請求は認めれず、被疑者を逮捕から2日後には釈放することができました。そして、釈放後の警察官、検察官からの事情聴取にも黙秘を継続させたことで、嫌疑不十分の不起訴を勝ち取ることができました。

解決のポイント

捜査機関は、被疑者に対し、「裁判官に反省していると伝えてあげるから素直に話した方がいいんじゃない。」「家族がやられたらどんな気持ちだ。 」「認めないってことは反省してないんだろ。」等の誘導、威圧をすることで、自白を促してくる場合があります。虚偽の自白をしてしまった場合には、その自白を取り消すことは困難であるため、黙秘をするということが何よりも重要になります。
この黙秘の必要性を逮捕前から詳細に説明することで、逮捕前、逮捕後、釈放後において被疑者に黙秘を継続させることができたことこそ、嫌疑不十分での不起訴を勝ち取ることができた一番のポイントであるといえます。

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